近年グローバルに活躍するビジネスマンは増加傾向にあります。多様な国籍や言語、文化、習慣、コミュニケーションに適応しながら働くことは、以前より求められるようになってきました。

スタートアップ・インキュベーターとして多方面で活躍するエアーズ・ジェフリー・正明(以下、ジェフ)さんは、2020年の取材当時香港と日本を拠点に働いていました。2ヵ国の全く違う仕事観の間で苦心していたジェフさんは、客観的に自分を整理し、自分らしい活躍の仕方を見つけようと、ZaPASSのコーチングを受けることに。

コーチングを通して、苦心の原因が明確になり、解消できたことで、自分なりの働き方を見つけたられたそう。そんなジェフさんに話を伺うと、多様性の中で葛藤と向き合い、進むべき方向を見つけていく上でのヒントが見えてきました。

(※本記事は2020年に取材したものをリメイクしてお届けしています)

2カ国の仕事観を「調和」した働き方

僕がコーチングを受け始めたのは、1年前です。普段はBINARYSTAR株式会社にて、ブロックチェーン産業のビジネス・アクセラレーションを担当し、複数のスタートアップ企業に携わるゼネラリストのように仕事をしています。

コーチングを受けた理由は、「自分らしい働き方」を見直す機会がほしかったから。2014年に大学を卒業してすぐに、香港の現地会社に飛び込んだ僕にはロールモデルがいませんでした。

また、2018年の11月に、東京での仕事が始まり、環境が大きく変わって、出張や大型案件の担当、新規事業の立ち上げなど、多種多様な仕事に追われる日々が続きました。

30歳という節目を迎えるにあたって、改めて自分の現在地を把握し、関わる多様な環境の中で、自分らしいパフォーマンスを発揮する方法を追求したいと考えるように。そこで、事業戦略立案やM&A実行支援、新規事業開発などのビジネス経験が豊富なプロコーチ、垂水さんにコーチングをお願いしました。

初めに垂水さんに相談したのは、東京で仕事をする上で感じていた、文化の違いに対応する方法でした。香港では、英語でコミュニケーションをとるので、白黒はっきりさせやすく、次のステップや未解決事項が明確になりやすい。

でも、日本は丁寧なコミュニケーションを重んじる文化。日本人が少ない環境で仕事をしてきた自分が、日本の文化に合わせようとすると、どうしても発言がしづらくなり、仕事が滞るような感覚を感じていたんです。

そう打ち明けると、垂水さんは「思考は英語脳でして、言葉だけ日本語に変えてみたらどうでしょうか」と提案してくれました。

日本の丁寧さやお伺いを立てる文化の中で、気づかないうちに、自分がすべき思考や選択までも、周りに委ねてしまっていたこと、その結果、自分の内側にある素直な意見が後回しになり、主体性を発揮できなかったことに気づきました。これは、日本で働いていると陥りがちな心理的なトラップだと思います。

垂水さんが下さったのはシンプルな提案でしたが、自分のなかで複雑に絡み合った糸が解けた感覚がしました。こうして僕は、白黒はっきりさせる思考を持ちながら日本語で意思疎通を図るという、香港と日本の仕事観が調和したしっくりくる働き方に変更することにしたのです。

ビジョンを言葉にすることで、葛藤を受け入れられた

次に相談したことは、様々な仕事に関わる中で、本来大切にしたい優先順位や価値観が見えづらくなっているということでした。

例えば、成果が重要視される環境では、自分本位に物事を判断し仕事を進めていく方が好都合の場合が多い。しかし、困っている人を見ると、それが短期的な成果に繋がらずとも助けずにはいれない自分がいるんです。合理的な思考をする自分と、感情的な選択をする自分との間に、もどかしい思いを抱えていました。

そのことを相談すると、垂水さんは「人生のビジョンを言語化してみませんか?」と提案してくれました。

「まず、社会に対して行いたいことや、大事にしている言葉を5つ挙げてください。次に “私は” という主語を加えて、文章にしてみてください。最後に、それらを達成していく上で、どんな存在で在りたいか、末尾に添えてみてください」

垂水さんにファシリテーションをしてもらいながら、浮かんできた言葉を伝え、文章に繋げていく。忙しい日常の中で、言葉に出来ていなかった思いが自然と湧き出てきました。なんとか言葉に落とし込み、できたビジョンはこの一文です。

「私は、社会善という究極の目的に対し、圧倒的な力という手段を持った上で、信頼と共感と優しさという生き方を通して、それを達成していくきっかけである。」

これまで意識できていなかった、人生の目的、それを叶える手段、大切にしたい価値観、在り方が一本の線で結びついた瞬間でした。

この一文によって、自分のこれまでの多様な活動を、はじめて説明できる言葉ができたと共に、これからの働き方・生き方に確信が持てた気がしました。人生のビジョンという大きな指針から見れば、困っている人に応えたい気持ちと、合理的であろうとしていることの二つの気持ちは、相対するものではなく、“私自身の本来の目的に紐づいて生まれている葛藤”だと気づけたのです。

葛藤は向かうべき方向を示すヒント

人生のビジョンができたからといって、仕事の課題や葛藤がなくなったわけではありません。しかし、葛藤に対して悩むのではなく、挑むという姿勢が身についたはのは大きな変化でした。

テクノロジーの進歩によって、いつ、誰と、どんな働き方をするか、自由に選べる時代の中で、自分らしい活躍の仕方に葛藤を抱えている人も多いでしょう。

そういう方には、葛藤を生み出している、相反する価値観の一方を選ぶ選択をするのではなく、どちらも大切にしようと向き合ってみてほしい。苦しいことでもありますが、葛藤は向かうべき方向を教えてくれるヒントだからです。

自己を顧みるプロセスが上手く行かないという方には、尊敬できる対話の相手を探すことがお勧めします。友人でも、コーチでも、自分の本来の姿を一緒に掘り出す伴走者がいることは、本当に素晴らしいことだと思います。

[取材構成編集・文] 水玉綾、林将寛、佐藤史紹  [撮影] 戸谷信博

Beingは、
ひたむきに生きるビジネスパーソンが打ち明けた、
純粋な願いたちを集めました。

人として、組織として、社会として、
本当はどう在りたいか。

組織と事業の成長、取り巻く環境変化のなかで
ときに矛盾や葛藤、経済合理性にもがきながら
彼らがBeing-在り方-を磨いてきた過程とは。

ここでしか語られることのない
飾らない言葉たちを分かち合います。

さあ、本当の願いからはじめよう。

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