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オンラインツールやリモートワークの普及に伴って、オンラインコミュニティーの需要が高まっています。クライアントやユーザーとの関係性の作り方について考え直している企業も多いのではないでしょうか。

コーチングを提供するZaPASSでは、事業の1つであるZaPASSコーチ養成講座の講座生の中で、「ZaPASSコミュニティ(仮称)」が育まれています。そのコミュニティの一員として活動しているのが、サイボウズ株式会社の綱嶋航平さん。

綱嶋さんは講座の受講中から、ZaPASSや他のコミュニティメンバーとの積極的な関わりを繰り返し、今では、コーチ養成講座を卒業したコーチのための、継続的な相互学習の場「道場」の運営メンバーに。プロコーチの技術・在り方を磨き合う場の、作り手側に回っています。

なぜ、綱嶋さんは本業で忙しい日々を送りながらも、ZaPASSコミュニティ内で積極的に活動されているのか。また、そうしたコミュニティメンバーの主体的な活動が生まれる、ZaPASSコミュニティの特徴とは。

綱嶋さんと足立さん(ZaPASS JAPAN CEO:足立愛樹)に、ZaPASSコミュニティで大切にしている考え方や目指す姿について聞きました。

自分の「全体性」を分かち合えるコミュニティ

-ZaPASSを中心としたコミュニティを作る上で、大切にされたことを教えてください。

ZaPASS CEO・足立愛樹(以下、足立)さん:一般的に言われるユーザーコミュニティは、LTV(ライフタイムバリュー)*1を高めることや、効率的なマーケティングを実現する施策として作られる場合が多いと思います。しかし、企業側の利益を優先しすぎて、属しているメンバーの体験価値が後回しになってしまっているケースもあるようです。

*1 LTV(ライフタイムバリュー)・・・顧客生涯価値 。企業にとってある一人の顧客が将来の関係全体に与える価値。

例えば、コミュニティからの売り上げや、それに直結するメンバー数を目標に運営しているところは、数値目標を達成するために無闇にメルマガを打ったり、解約しづらいフローを作るといった施策に走りがちになる。その結果ユーザーが離れ、さらに人を集める為の施策が強化され、メンバーの体験価値がどんどん損なわれていくループに陥ってしまうところもある。

ZaPASSでは、利益追求のためにコミュニティを作ったわけではありません

そもそも「ZaPASSコミュニティ」という名前の何かがあるわけではないんです。ただ、同じ期はもちろん、期をまたいだ養成講座生同士のつながりや、養成講座生とZaPASSのつながりは確かに存在していて。

そうしたグラデーションのあるつながり一体を、今回便宜上「ZaPASSコミュニティ」と呼ばせていただいています。このコミュニティは、計画に沿って作られたのではなく、「一度でも関わりを持ってくれた方々と、どんな関係性を築いていきたいか?」を考える中で、自然と形になっていったんです。

ー築きたい関係性とは、どんなものですか?

足立さん:人が本心から望んでいることを分かち合える、「願いで繋がる関係性」です。願いとは、その人自身が心の底から望む在り方や生き方のこと。僕は、それを分かち合える関係性が、世の中に不足しているんじゃないかと思っているんです。

ビジネスパーソン同士の関係性は基本的に、お金を媒介として成り立っています。「いくら支払うから、この価値を出して」と、お互いが持っている資産や能力を交換し合っている。この関係はフェアで合理的である一方、仕事とは関係ない悩みや葛藤を共有しづらいものでもあります。

また、プライベートの友人や家族との間でも、一概には言えませんが、仕事や職場で抱えてる悩みや葛藤を共有できない場合もある。例えば、職場で辛いことがあって休みをとりたいけれど、子供やパートナーの生活を考えると、なかなか言い出しにくいといった経験をされている方もいるのではないでしょうか。

サイボウズ・綱嶋航平(以下、綱嶋)さん:確かに、企業には組織のヒエラルキーがあったり、受発注関係の中で、心のうちにある思いを伝えづらい場面がありますね。また、家族や友人も、近しい関係だからこそ、本音を伝えるのは小っ恥ずかしいみたいな気持ちも理解できます。

足立さん:そうなんですよ。これは僕自身の体験と、これまでコーチングを通してさまざまな方と話してきた中で感じていることなんですが、いま世の中にある関係性の中では、人は「何かしらの分かち合えなさ」を抱えているのだと思います。

本当は理解してもらいたいし、聴いてもらいたい。自分の価値観の一面だけでなく、全体性を共有したいのに、それができる関係性ばかりではない。その結果、物理的に誰かと一緒にいながらも、「精神的な孤独」を感じることがある。
ですからZaPASSコミュニティでは、自分が本当に望んでいることも、悩みや葛藤も、全てありのままに共有し合えるような「願いで繋がる関係性」を作りたいんです。多かれ少なかれ、誰もが感じている精神的な孤独を、解消できるサードプレイスになったら良いなと思っています。

願いを叶え合う「贈与」の関係性

ー「願いで繋がる関係性」について、もう少し詳しく聞かせてください。

綱嶋さん:「願いで繋がる関係性」とは、先日記事で取り上げられていたクルミドコーヒー店主の影山さんが、著書『ゆっくり、いそげ』(大和書房)の中で「贈与」と表現されている関係性に近いと思います。

「贈与」とは、人に貢献する分と同等の対価を求める「交換」とは違って、人に貢献することそのものが、その人自身の喜びや生きがいに繋がっている状態のこと。

足立さん:素敵ですね。確かに、願いで繋がる関係性は、贈与の関係性とも言えるかもしれません。コーチとしての在り方を大切にする、コーチ養成講座のメンバーが作るZaPASSコミュニティでは、お互いの願いを深く聴く場が自然と生まれているように感じます。

深く願いを聴くと、自ずと、誰かの願いを叶えようと貢献したくなりますし、そうした行動自体が各々のコーチとしての理想の生き方を実現することにも繋がっているのかもしれません。贈与し合うなかで、両方にとって嬉しい関係が成り立つんです。

価値を受け取った人は、今度は提供側に回ろうと自然に思えて、その循環はどんどん広がっていく。コミュニティ内で、贈与の関係性を経験したメンバーが、日々の生活や仕事の中でも周りの人たちに実践していけると、贈与の循環が生まれ、社会にも何らかの良い影響が生まれていくと思っています。

願いに通じる入り口は、「感じている」こと

ー願いで繋がると、「贈与」の関係が成り立ちやすくなるんですね。綱嶋さんは、実際、ZaPASSとの関わりの中でどのような経験をされたんでしょうか。

綱嶋さん:もともとZaPASSの養成講座に通い始めたのは、人事や採用担当として働く中で、相手の本心を引き出すコミュニケーションをもっととりたいと考えていたからです。

半年くらいのZaPASSの講座を受けたところ、本業で一緒に働くチームメンバーから、「綱嶋さんの話の聴き方が変わった」と立て続けにフィードバックをもらい、自分では変化を実感しています。愛樹さんからどう見えてるかもぜひこの機会に知りたいです(笑)。

足立さん:それはもう、おっしゃる通りですよ。その上で、僕が客観的に見て感じる、綱嶋さんの最も大きな変化は、綱嶋さん自身の願いがより深まったことじゃないかと思っています。

あくまで個人的な意見ですが、綱嶋さんってもともと他者配慮が強みの方だと思うんです。だから本業の採用面接で、学生の悩みに親身になることがとても得意だったと聞いています。しかし、それが故に、自分自身のありたい姿や、目指していることを後回しにしてしまうといった葛藤を抱えられていましたよね。

綱嶋さん:そうなんですよ、今から大体1年くらい前のことですね。

足立さん:僕が、そんな綱嶋さんの変化を特にまざまざと感じたのは、養成講座を卒業し登録コーチとして1年間活動された後に、「コーチ」から「プロフェッショナルコーチ」へのランクアップ面談を打診された時です。あの時、コーチとして生きていく覚悟と、強い意思を感じたんですよね。自分への理解度、向き合い方、そこから来る振る舞いや言葉遣いが、大きく変化されていて、とても感動したことを覚えています

綱嶋さん:そう言っていただけて嬉しいです。コーチとして学んだこともそうですが、ZaPASSコミュニティ内で自然と行われている人と人との関わりから、大きな影響を受けたと思います。

コミュニティ内の打ち合わせでは、「私は、今の意見に対してこう“感じています”」と、論理だけではなく感情や感覚を共有しています。初めに「綱嶋さんはどう感じていますか?」と問われた時には戸惑いましたが、それは、“会議では論理的な意見を言わなければならない”という無意識の思い込みがあったからでした。

コミュニティ内で常に、正解不正解の判断を横に置いて、感じていることを共有し合うコミュニケーションを繰り返していった結果、自分の内側にある純粋な願いを深めることができたんです。

リーダーを決めず、柔軟で持続性のあるコミュニティを

ー感情や感覚の共有ができる環境で、より「願い」に自覚的になれた、と。そうした変化を経て、綱嶋さんは現在「道場」という取り組みをされています。どういった活動なんでしょうか。

綱嶋さん:「道場」は、養成講座の卒業生限定で開催している、コーチングの継続的な相互学習の場です。2人1組でお互いにコーチングし合う「ペアコーチング」や、養成講座講師の小寺さん(ZaPASS 経営顧問 小寺毅)にファシリテーションをしてもらいながら、それぞれのコーチとしての経験をシェアし合う「全体会」、週次の「夜会」などを行っています。

テクニックやノウハウだけを学ぶ場ではなく、剣道や柔道と同じように探究し続けることができるコーチとしての生き方(=コーチ道)を歩む人同士が、お互いの「在り方」を磨き合う場です。

足立さん:「在り方」を磨くと聞くと、なんだか修行みたいなプロセスを思い浮かべる方もいると思います。滝に打たれて心頭滅却したり、毎日自分と向き合う瞑想をしたり。もちろん、それらも素晴らしい取り組みですが、相当なトレーニングが必要。

忙しいビジネスパーソンでも「在り方」を磨きやすくするために、お互いの「在り方」に触れてインスピレーションが湧く体験や、自分に刺さる問いかけを得られる体験など、道場は、偶発的な学びや気づきの多い場として運営していますね。

ー今後の「道場」やZaPASSコミュニティ全体の展望については、どう考えていますか。

綱嶋さん:「道場」は統括やリーダーを特別設けずに、メンバーそれぞれが、自分のリーダーシップを発揮しながら発展させていく場でありたいと思っています。数値目標やそれに準ずる計画を準備するつもりは、今のところありません。

お世話になっている、街づくりのプロフェッショナルの方がいるんですが、その方はあえてリーダーのいないコミュニティ作りを大事にしていると言います。一人ひとりのメンバーが「やりたいことを、やりたい時に、やりたいだけやった」結果、その時、その場で本当に必要な物事や関係性が育ち、持続性の高いコミュニティが生まれるそう。

「道場」も、コーチングを上達させるだけに止まらず、メンバーの願いに紐づいた活動が、自発的に生まれ、社会に対しても影響を与えるような場所になったら良いなと思っています。

足立さん:綱嶋さんの目指している「道場」の世界観や考え方にワクワクしています。「道場」を含めた、ZaPASSコミュニティ全体も、その時々、一緒に作っていく人たちが望むように姿形を変えていけたらいいですよね。

僕らはある種、「こうなってほしい」みたいな結果へのこだわりは捨ててるところもあるんです。ただ、唯一手放したくないのは、「関わっている人たちや社会にとって良い場所にしたい」という湧き出る気持ち。それだけは持ちながら、「願いで繋がる関係性」が今後どう発展していくのか、僕自身も楽しみにしていきたいと思います。

(お二人の対談の生音源をYouTubeで公開しています。移動中の方や、ながら作業を好まれる方は、こちらからご視聴ください。)

[取材構成編集・文] 水玉綾、佐藤史紹  [撮影] 伊藤圭

Beingは、
ひたむきに生きるビジネスパーソンが打ち明けた、
純粋な願いたちを集めました。

人として、組織として、社会として、
本当はどう在りたいか。

組織と事業の成長、取り巻く環境変化のなかで
ときに矛盾や葛藤、経済合理性にもがきながら
彼らがBeing-在り方-を磨いてきた過程とは。

ここでしか語られることのない
飾らない言葉たちを分かち合います。

さあ、本当の願いからはじめよう。

メディア「Being」は
ひたむきに生きるビジネスパーソンが打ち明けた、
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