リモートワークの普及によって社員間のコミュニケーション量が減少し、カルチャーの希薄化や社員のエンゲージメント低下などの課題を抱える企業が増えています。不足したコミュニケーションを補う方法を模索している、経営者や人事責任者の方は多いのではないでしょうか。

完全オンラインチームのZaPASSは、創業から四半期に一度、メンバー同士の関係性や会社の在り方を見直す「チームセッション」を実施してきました。経営において優先度をとても高く位置付け、ときには1泊2日の合宿型を行うことも。

過去7回実施してきたZaPASSが考える、チームセッションの本質的な価値とはなにか。プロファシリテーターでありZaPASS経営顧問の小寺毅さんと、チームセッション導入を主導したZaPASS代表取締役COOの管大輔さんに、大切にしている考えや、場づくりにおける工夫を伺いました。

“費用対効果”を超えて、次世代組織を作るために

ーチームセッションなどの“コミュニケーション機会”が重要視されるようになった社会的な背景について、小寺さんの考えを教えてください。

経営顧問・小寺毅(以下、小寺)さん:あくまでも私見ですが、高度経済成長期で発展してきた工業社会がピークを迎え、人を代替可能なパーツと捉えるような企業で働くことに、閉塞感や違和感を感じる人が増えたんじゃないでしょうか。

特に、働き方や生き方の価値観が変わった背景には、大きな3つの転機があると思っています。1つ目はリーマンショック。多くの人が「このまま利益重視の経営を続けていいのか」と疑問を持った最初の出来事かと思います。2つ目は東日本大震災。命について深く考え、生きる上で大切なものを捉え直す機会になりました。3つ目は、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大。オフィスに出社する当たり前が崩れ「会社とは何か、働くとは何か」という問いが突きつけられ、多様な答えが生まれてきたのを感じます。

こうした背景から、「何のために働くのか?」「自分たちのチームや会社は何のために、何を成す存在なのか?」など、大事だけれども普段はじっくりと考えたり、対話したりしない問いに、目を向ける人や組織が増えました。

チームセッションは、そうした“第二領域を扱うコミュニケーション”の場であり、1人ひとりの想いや感覚を分かち合う場です。メンバー同士のつながりや、未来に対する新たなインスピレーションが生まれる機会として、注目が集まってきているのだと思います。

ー緊急ではないけれど重要な“第二領域”に目を向ける人が増えたんですね。そうしたなかで、ZaPASSはチームセッションをどう捉えているのでしょうか。

小寺さん:ZaPASSのチームセッションは、単なる組織課題の解決策や、利益を上げるための施策ではありません。個人が自分の価値観やビジョンを軸に自走する「自主自律型の次世代組織」を目指す上で、必要不可欠なものと考えています。創業当初から、チームセッションを通して人の価値観や感情を大事にする組織が、世の中にどのようなインパクトを出せるかという冒険を、一緒にしているんです。

COO・管大輔(以下、管)さん:確かにチームセッション単体での費用対効果は考えたことありませんね。メンバーが自分の在り方(Being)を見つめ直したり、社会におけるZaPASSの存在意義を話し合うこと自体が、自主自律型組織に繋がると思うんです。目先の利益よりも重要なことに取り組めていると感じています。

感情の絡み合いが「関係性」を育み、組織を強くする

ー自主自律型の組織を作るためのチームセッションで、大切にされていることを教えてください。

小寺さん:チームセッションの結末をコントロールしないことですね。着地を考えて議論を進めるのではなく、参加している皆さんの様子を観察しながら、進め方を変えています。観察しているのは発言だけではなく、表情の明るさ、身振り手振り、声のトーン、発するタイミング、どの話に反応したのかなど、あげればキリがありません。皆さんから感じ取れる全てを生かしながら流れを作っていく。それを場に委ねると表現したりします。

管さん:参加している側は、全体の意図や着地は気にしませんが、思っていることを率直に話すことと、積極的に人の意見に絡むことは意識しています。過去に行ったチームセッションで、小寺さんから「絡み合いを強めましょう」と言われて意識するようになったんです。

ー絡み合いとは?

小寺さん:意見を言って終わりではなくて、他の人の意見を聞いて感じたことを、素直に本音で口に出す。それに対して、また誰かが感じたことを話す。そうやって話を発展させていくんです。「Aさんはこう思っている。Bさんはこう思っている」と、バラバラの点として扱うのではなく、点と点を繋いで、共通理解となる物語を作るイメージです。絡み合うコミュニケーションに慣れていくと、日常に戻った時も、メンバー間の関係性が育まれて、組織が強くなると考えています。

ーよく課題としてあげられる“縦割りのコミュニケーション”が解消されていくんですね。

小寺さん:そうですね。もう一つ大切なポイントは「感情からはじめること」です。会議室で行う議論は、感情が置いてけぼりになり、どうしても論理性に偏ってしまいます。ですからチームセッションでは、日頃使っている思考を一旦脇に置き、心が感じているものに意識を向けやすい場づくりを、あえてしています。

例えば、外に出て身体を動かしたりする。太陽の光や、風の音、土の香りは人間の五感を刺激し、身体を動かすことは感情を生み出してくれるんです。感じたものや感情を、頭を使って言語化して共有していく。“心が先で、頭はあと”の順番が大切です。

管さん:この考え方を経営にも取り入れ、「感情からはじめる」をZaPASSのバリューに入れました。頭を使うのは大事ですが、頭の使い方を間違えないことが大切だと思っています。

厳しさと愛のある、率直なコミュニケーションを増やす

ー実際に行われたチームセッションについて、印象的だったものはありますか?

管さん:コロナ以前に行った、森で1泊2日を過ごすチームセッションで、コンテンツの1つとして、本気の“押し相撲”をやったんですね。やってみると「自分が本気でぶつかっても、相手は押し返してくれる」という安心感を得られたりして、これはただの遊びではなく、“絡み合い”を体感するアクティビティなんだと感じました。

以降、メンバーの間では「押し相撲の時みたいに、本気で意見を言い合いたいです」といった発言も出てきて、本音のコミュニケーションがさらに行き交うようになったんです。

小寺さん:大切にしたい考え方や価値観は、言語だけではなく、体験を通して感覚的にすり合わせることで、より強い共通認識となります。今は時期的に難しいところもありますが、同じ場所で共通体験ができるのは、対面で行うチームセッションのメリットですね。

ーユニークな“押し相撲の回”も含め、ZaPASSでは過去7回のチームセッションが行われていますね。チームセッションを繰り返すことによって、組織はどのように変化するのでしょうか?

管さん:チームセッションで取り扱うのは、会社の存在意義など、正解のないテーマです。忖度も遠慮もなく話すメンバーの意見は、「なるほど!」と感じたり、「素敵な視点だ」と感銘を受けるものが多いんですよ。

それらの意見が合わさると、このメンバーだからこそ描ける企業のビジョンや、届けられる価値が見えてきます。すると、これは個人的な気持ちの変化ですが、純粋にこれからも一緒にいたいって思えてくるんですよね。誰も欠けて欲しくない。そんな気持ちが湧き出てきます。

だからといって、“甘い”関係になるわけではありません。むしろ、仕事におけるコミュニケーションは厳しめになる。人間性を否定していない前提があるからこそ、フィードバックをする側もされる側もストレートな物言いが増えていきます。より力強く、成果に対しても向かっていける組織になるんです。

小寺さん:チームセッションを重ねていくことで、関わる人たちの等身大で率直なコミュニケーションが生まれます。自然と、厳しい言葉だけでなく、愛ある言葉や思いやりの言葉が増えていくんです。人が営みの中で感じる感情の全てを、当たり前のように共有できれば、共に手を取り合い人間らしく生きていける血の通った組織になっていくと思っています。

チームセッションの決め手は“願いや信念の強さ”

ー今後、チームセッションを導入する企業は増えてくると思います。リアルで集まれず、オンラインで行う場合に工夫できることはなんでしょうか?

小寺さん:ZaPASSでは過去に何度も、オンラインでのチームセッションを行っています。開催のポイントは、画面越しでも参加者の皆さんが集中して、お互いに対して意識を向けられる状態を作ること。僕がファシリテーターをする際は、発言をしっかりと聞いたり、話を振って全員にスポットライトを当てることをより意識しています。文字にすると当たり前に聞こえますが、これをどのレベルでやるのかで結果は変わってくるんです。

技術のレベルもそうですが、それ以上に“願いや信念の強さ”が大事だと思うんですね。このチームセッションに参加している方が、ありのままの自分を表現でき、メンバーや組織とより深い関係を築けて、素晴らしい時間が過ごせるようにと願う気持ちです。

社外に依頼する場合も、社内で担当する場合も、ファシリテーターの願いや信念が、参加者の心を開き、本音を引き出し、インスピレーションが湧き出る土壌をつくります。オンラインだからといって、表面的な方法論に囚われず、設計者自身が「在り方」を整えることが、いい場を作る近道だと思います。

ーチームセッションの導入を検討している経営者やリーダーの方に向けて、お伝えしたいことはありますか?

小寺さん:飛躍して聞こえるかもしれませんが「みんな生きている」という大前提を、改めてお伝えしたいです。人はそれぞれ、悩みや喜怒哀楽の感情を持ちながら、人生の物語を紡いでいます。組織とは、縁あって物語が交差した人たちの集まり。決して組織のために人がいるわけではありません。

お互いの物語に思いを馳せ、繋がった縁のありがたさを思えば、人を代替可能なパーツと扱うような組織とは真逆の、助け合いと思いやりに溢れた組織ができると思います。そうした心根を持って、チームセッションを導入・運用していただけたら嬉しいです。

管さん:経営者やリーダーの皆さんの中には、組織をよくしたい責任感からコントロールを強めてしまっている人もいるはずです。でもコントロールを強めるほど、メンバーの主体性と当事者意識は薄れ、予想した範囲内の意見しか出ない組織になっていく。

そうしたジレンマを抱える人ほど、いったん役割を手放し、いち参加者として議論に加わるチームセッションを体験してみてほしいです。メンバーが生き生きと本音を話す姿を見て、あなた自身の中に、新たな発見と「任せていいんだ」という安心感が生まれる、組織が変わる大きな転機になるはずです。

ZaPASSは引き続きチームセッションに取り組んでいきます。実践する中で気づいたことや学んだことを共有させてもらいながら、皆さんと一緒に、自主自律型の次世代組織作りを探究していきたいと思います。

[取材構成編集・文] 水玉綾、佐藤史紹  [撮影] 伊藤圭

Beingは、
ひたむきに生きるビジネスパーソンが打ち明けた、
純粋な願いたちを集めました。

人として、組織として、社会として、
本当はどう在りたいか。

組織と事業の成長、取り巻く環境変化のなかで
ときに矛盾や葛藤、経済合理性にもがきながら
彼らがBeing-在り方-を磨いてきた過程とは。

ここでしか語られることのない
飾らない言葉たちを分かち合います。

さあ、本当の願いからはじめよう。

メディア「Being」は
ひたむきに生きるビジネスパーソンが打ち明けた、
純粋な願いたちを集めました。

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ときに矛盾や葛藤、経済合理性にもがきながら
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