変化の大きい社会情勢の中で、働き方や組織マネジメントの常識が変わろうとしています。個人の幸せの追求や、役職・役割に囚われないフラットな人間関係、多様性を生かし合う組織作りなど、これまでの年功序列でトップダウンの経営とは違った手法に注目が集まっています。そんな中、変化に対応すべく頭を悩ましているリーダーは多いのではないでしょうか。

コーチングを主力事業とするZaPASSは、コロナ前の創業時から、住居エリアの違いによって完全オンラインで業務を行ってきました。四半期に一度「チームセッション」を行い対面で顔を合わせたり、情報の透明性を上げるために話し合いで給与を決めるなど、様々な取り組みを試し、大切にしたい在り方をベースとした組織運営を目指しています。

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今回Being編集部は、ZaPASSの共同経営者である足立愛樹さんと管大輔さんの二人に話を聞きました。組織作りの根底にある考えとは。

多様性を受容し、根が力強く絡み合う

経営陣4名のインタビューで“森”のような組織にしたい、と聞いていますが、もう少し詳しく教えていただけますか。

足立さん:森という言葉に込めたイメージを話しますね。森は、木の根っこが絡み合うことで、台風や豪雨が来ても倒れないほどに強くなるんです。そして、木々は一つとして同じ形がなく、自由に枝を伸ばし、常に変化している。そんな木々を人間に置き換えれば、根本の思いを共有している組織には強い土台が出来ますし、人間は一人として同じ人はおらず、その個性や才能を尊重することが自然であると思えてきます。そんな森をメタファーにした組織作りを意識しています。

ー面白い。自然な在り方を森から学んでいるんですね。

管さん:そうかもしれません。実は僕と愛樹(足立)はZaPASSを立ち上げる以前、ビジネスの環境下で、人と衝突して、疲弊しながら、がむしゃらに働いてきた経験があります。その反動でZaPASSでは「愛や優しさ」を大切にするあまり、「力」を発揮することに恐れを持っていました。

そんな時、経営顧問の小寺さんが、森を例えに出して“ぶつかり合うことで、より根の絡まりが強くなり、もっと支え合うことができる”と教えてくれてハッとしたんですよ。以来、真正面から議論をし、根をしっかり絡め合った上でお互いらしさを伸ばしていく、森のような組織を作ろうと共通認識を持っていますね。

全員での意思決定が、誰かの願いをチームの願いに変える

ーZaPASSは、創業時から全員で話し合いながら意思決定をしていると聞いています。それは何故でしょうか。

管さん:企業は、スピードや生産性を求める際に、少人数での意思決定とトップダウンの指示を採用するのが一般的だと思います。しかし、その場合決定事項に対して、全員が100%納得していないまま進むリスクがある。その結果個人のやりがいだけでなく生産性にも負の影響が出るんじゃないか、と僕らは思っているんです。各自が他の人の意見を聞き、尚且つ自分の意見も伝える場があるだけで、決定後の実行スピードは実際に上がります。そうした背景で創業時から今日まで全員での話し合いで決めていますね。

足立さん:U理論をベースにして作ったこの図(以下)で表すと、『効率的だが効果小』と書かれた上の青いルートではなく、『非効率だが効果大』と書かれた下のオレンジのルートを辿ることに重きを置いています。このプロセスでは、感情の共有や内観(自分の心の内側を観ること)を通して、誰かの願いがチームの願いになっていく。すると、意思決定した後に「そもそもの目的はなんでしたっけ?」みたいなことが起きづらくなる。よくいう“自分事に捉えられる状態”になるんですよね。

実際にこの理論を使って、今は給与制度を開発しています。これまで給与制度は、コアメンバー数人で決めていましたが、これからは全員で話しながら決めていくプロセスに。少人数で決めた方が効率もいいし、給与を公開することのデメリットもあるかもしれません。しかし、組織を森と捉えるならば、他の人たちが働いている条件がわかる方が、お互いサポートやリクエストもしやすくなるはずです。

ZaPASSでは、全員が当たり前のように兼業や副業を行っているので、お互いの状況がわからなければ、遠慮が生じます。本来は、本人同士で話した方がよいことでも、コアなメンバーを仲介して相談事やフィードバックをすることになり兼ねません。全員が組織の状態を把握しながら、主体的に意思決定し、行動するためにも、給与情報を含む情報開示を進めていますね。

チームセッションの3分の2が、個人に焦点を当てる時間

ーそうした新しい給与制度の設計についても、チームセッションで話していると伺いました。そもそもどんな目的で開催しているのでしょうか。

足立さん:チームセッションは、なんの淀みもなく個人の願いに向き合える場なんです。日々の議論には、アジェンダと制限時間があるので、無意識的にそれに沿った考え方が出てきます。ある程度の方向性がある。しかしチームセッションは、事前に設定したテーマすら流れによって変わっていくほど、制約のない場。だからこそ、会社のミッションや関係性のメンテナンス、給与制度についてなど、日常の延長線上では、なかなか議論しづらいテーマを取り扱っています。

ーチームセッションの時間だからこその工夫はありますか?

管さん:日常とは違って、“最悪まとまらなくてもいいし、なるようになる”という気持ちで、着地をコントロールしないことですね。事前準備はなるべくしないようにして、全体のテーマをきっちり決めることもあまりありません。その場にある流れや、感情の機微を感じながら進めていくことで、個々の深い願いを見にいきますね。

場づくりを担当しているのは、プロフェッショナルコーチ・ファシリテーターである小寺さんです。彼は、問いかけをしながら、組織の中で流れが淀んでいる部分を見つけていくんです。以前のチームセッションで、ZaPASSの未来像を全員で話す中、いつもなら自由に話し始める愛樹が何かを抱えているような雰囲気だったので、「まずは愛樹さんの願いを話してください」という問いが出たことがあって。

足立さん:そう、そう。3時間のチームセッションのうち、2時間も僕の話を聞いてもらってましたね。最初は、全員の時間をとる申し訳なさもあったんですが、「右手の血流が淀んでいると、体全体の血流が淀んでしまうんです」と言われて。自分自身の淀みを解決することが、全体のためにもなると考え直しました。すると、話しているうちに、自分の中にあった、「ZaPASSのビジョンを実現していく上で、優しい側面だけでなく、ビジネスとしての成長にも真剣に向き合い続けるチームでありたい」という深い願いが出てきたんですよ。

自分が内側に抱えている悩みや、組織の中で生じている障壁など、流れを淀ませているものを吐露していくと、深い願いに気づいていく。すると、乗り越えるために対話ができる。自ずとその先の行動が変わっていく。チームセッションはそんな風に、根本から自分たちの大切にしたい在り方を育む、特別な時間だと思います。

Z軸のパスを社会に循環させたい

ー最後に、“森”のような組織を目指す上で、これからの展望を教えてください

足立さん:「愛と力」の両立は今後も大切にしていきたいです。そもそもZaPASSは、Z軸のパスを社会に循環させることを目指していて、愛か力か、といったXとYの二項対立ではなく、両方を包含できるZ軸を提案したい。親が子供に“愛情を注ぐ”ように、師匠が弟子に“伝承”するように、その人の想いをのせたパスで、世界の幸福の総和を増やしたい。だからこそ社名もTHE PASSをアレンジして「ZaPASS」なんですよ。Z軸を提案することで、どちらか一方に最適化したもの以上により本質的に良いものを届けたい、というのが根本の思いです。

管さん:キング牧師の言葉ですが愛なき力は暴力で、力なき愛は無力」といいます。そのバランスを大事にしながら、自主自律型の組織でありたい気持ちは愛樹と一緒です。また、ZaPASSはサービスを通じて人の本当の願いを後押しし、幸福の総量を増やしていくチーム。だからこそ、まずはZaPASS自身が、その思いを体現する組織であれるよう、引き続き頑張りたいと思います!

[取材構成編集・文] 水玉綾、佐藤史紹  [撮影] 伊藤圭

Beingは、
ひたむきに生きるビジネスパーソンが打ち明けた、
純粋な願いたちを集めました。

人として、組織として、社会として、
本当はどう在りたいか。

組織と事業の成長、取り巻く環境変化のなかで
ときに矛盾や葛藤、経済合理性にもがきながら
彼らがBeing-在り方-を磨いてきた過程とは。

ここでしか語られることのない
飾らない言葉たちを分かち合います。

さあ、本当の願いからはじめよう。

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