ZaPASSで活躍するコーチに、コーチになったきっかけやコーチングへの想いを聞く連載。今回は、本橋竜太さんのインタビューです。

組織と人を輝かせるリーダーとの出会いから、人材育成の道へ

――本橋さんが、プロコーチになった理由を教えてください。

コーチングを学ぶ中で、人の心の奥深くにある感情や感覚、価値観に触れ、共鳴する「コーチングという関わり方」が、想像していたよりずっと奥が深く面白いと感じたからです。

本格的にコーチングを学んだのは2020年1月からZaPASSのコーチ養成講座を受講したときだったのですが、コーチング自体は以前から知っていて、大学生の頃から実践していたんです。

当時アルバイトとして働いていたバーガーキングで、素晴らしいマネジメントをする店長に出会って。感銘を受けた僕は「こんなふうに、一人ひとりの力を引き出して、活き活きとしたチームを作れる人になりたい」と思うようになりました。そこからチームビルディングや人材育成についてめちゃくちゃ勉強していました。

その中で、人材育成スキルの一つとしてコーチングを知ったんです。

同じ頃、バーガーキングで店舗オペレーションの優劣を競う、世界大会が開催されることになりました。店舗の後輩が出場することになり、僕は彼のコーチとして、本やネットで学んだコーチングスキルを使いながら、彼が持っている力を最大限引き出すサポートをしました。

その結果、彼が25ヵ国10万人の中のアジアチャンピオンになったんです。人が持つ可能性を最大化させること、誰かの目標達成を実現することにやりがいを感じた瞬間でしたね。

コーチングを実践して、一応結果にもつながっていた。だから、講座が始まった初日、「僕はほかのメンバーより上手くできるだろう!」とタカをくくっていました。

――実際はどうでしたか?

いやそれが、全然できなかったんですよ。というか、それまで実践してきたコーチングと、講師である小寺さんが醸し出す空気感とか、テンポとか、参加者一人ひとりとの関わり方とか、全てが”違った”んです。

僕はコーチングを、単なる目標達成を実現するスキルとしてしかみていなかった少々やり方が雑でも、目標達成できればそれでいいじゃんって。「今何を課題に感じている?」「どうすればいいと思う?」など、質問によって相手から引き出すコミュニケーションはとっていたけれど、あくまで最短で目標まで走るための問いという感じです。

でも、コーチングは決して表層の行動だけを扱っていくものじゃない。実際はクライアントの人生に本気で関わるし、深く入りながら共鳴していくものなんだと感じました。

言葉の裏にある感情や感覚を扱う大切さ、さらにその奥にある価値観に触れていく尊さ。そして、クライアントの本当の願いが心の中から湧き出てくるには、コーチはただ傾聴をするだけではなく、クライアントの可能性を信じ切るという姿勢が必要不可欠です。

そういう…コーチングの本質を学んで、コーチングの見え方や捉え方がガラッと変わったんです。

人とこんな関わり方ができるんだなというか、共鳴しながらクライアントと一緒に音を奏でていく感覚。「これって、コーチにしかできないことだなあ」と思いました。アルバイト時代の経験も素晴らしいものでしたが、コーチングとしてはまだまだだったんだなって。

もう、コーチングは先が見えることない終わりなき道だと思いましたね。この深みをもっと知りたいと感じて、プロコーチになることを決意しました。

剛柔一体の関わり方で、クライアントの思いを受け止め、現実の好転につなげる

――本橋さんがセッションで大事にしていることは何ですか?

セッションを、「クライアントのためだけの時間」に使ってもらうことです。

コーチングは、クライアントが決して安くはないお金を払い、忙しい中時間を作って受けてくださっているもの。僕はその時間を、クライアントの在りたい姿や目標の現実を支援するための時間にしたいと強く思っています。

しかし、例えばコーチが誘導するような質問をしたり、クライアントの中から湧き出るものを深く探求する前にアドバイスしてしまったり、テーマが少しも進まず自分が考えてきた結論に着地しただけ、といったセッションになってしまうのは非常にもったいない。

こうなる原因は、コーチの視点がクライアントではなく、「コーチングしている風」の自分自身に向いてしまっているからです。

これでは、クライアントがセッション前に想像もしていなかった自分へ変化することにはつながりません。やはり、いかにクライアントにとって真に価値のある時間にしていくかが大事で、コーチング風ではなく、目の前の相手に本気で向き合い共創していく姿勢を大事にしたいなと思います。

――どうすれば、セッションをクライアントさんにとって価値のある時間にできるのでしょうか?

僕が意識しているのは、「剛柔一体」という考え方です。これは、僕が子どものときから習っていた少林寺拳法の中にある教えで、相反するものを組み合わせて使うことで、効果を倍増させるというものです。

まず「柔」の部分ですが、僕自身の強みである共感性です。苦しい、つらいといった、いわゆるマイナスの感情も含めて、相手の人生を丸ごと受け止める柔らかさを常に持っていたいなと思っています。「本橋さんだったら、どんなことも受け止めてくれる」という心理的安全性をつくることが、クライアントに心の底から沸き上がってくる思いを全て話していただくための土台になるので。

対して「剛」は、クライアントが持つ願いを、行動にしっかり落とし込む力強さと捉えています。

願いをただ言葉にするだけでは、残念ながら現実は変わりません。だからこそ、現実を変えていくアクションに落とし込み、日々の中で変化を起こすところに力強さを発揮したいなと思っているんです。

例えばクライアントさんの発言に対し、「今すごい楽しそうな内容をお話ししてますけど、私の目にはすごい悲しそうに見えますが、どうですか」「それは、心の奥底で本当に思っていることですか」といった、ときに相手の内面にぐっと踏み込むような、挑戦的な質問を投げかけることもあります。

こんなふうに、柔らかさと力強さを持って、クライアントさんとその願いに向き合っていく。そしてセッションの時間を「明日からの人生をより素晴らしいものしていくための価値ある時間」にしていく。これが大切にしていることですね。

コーチングは、今まで自分を育ててくれた人たちへの恩返し

――本橋さんご自身は、コーチとしてどのような未来を創っていきたいのでしょうか?

ひとつ、自分の経験を生かして実現したいなと思っているのが、サービス業の現場で奮闘する、リーダーやマネージャー層に、コーチングの思想や概念をインストールすることです。

今、サービス業の現場で働くリーダーは、本当に苦しい思いをしています。新型コロナウイルスの流行によって、世の中の価値観も、お客様から求められることも大きく変化しました。感染の恐怖と隣合わせの中で、接客の現場を離れたくなる方もいらっしゃるでしょう。これまで以上に「なぜここで、このチームのために働いてるのか」という納得感や帰属意識が必要になっているように感じます。

これはまさにコーチングの領域。僕自身のサービス業の経験が長いからこそ、どのようにコーチングを活かしていけばいいかのイメージも持てます。なので、現場で奮闘していらっしゃる人にこそコーチングをスキルと共に思想、概念を身に付けていただき、それをマネジメントで活かしてほしいなと思います。

ただ、僕はコーチングに対してもっとシンプルな思いを持っていて。プロとしてコーチングを提供することで、僕を導いてくれた人たちに恩返しがしたいんです。

今でこそ「クライアントの願いの実現に伴走する」なんて言っている僕ですが、高校時代にチームを率いる立場にいたとき、メンバーの願いを一切尊重できず、大失敗した経験があります。

当時、部活で部長になったのですが、「勝つことがすべて」と思い、メンバーを試合で「勝てる人」と「勝てない人」にレベル分けし、「勝てない人」に分けられたメンバーは練習量を減らしたりしたんです。

そうしたら、もう部員ががどんどん辞めていって、3分の1くらいごっそりいなくなりました。

今考えたら当たり前なんですけど、部活に求めることって勝つことだけじゃない。純粋にスポーツを楽しみたい人や、まだ勝てないけれど向上心を持っている人の気持ちが全然見えていなかった。我ながらひどいですよね。

これは色んな経験を経て最近やっと言語化できたことですが、僕の願いは、人が小さな一歩を踏み出すことに貢献することなんです。その内側から湧き出る願いを、高校時代は「勝つことが最大の成長だ」と読み違えてしまっていたんですね。

その後、バーガーキングで素晴らしい店長に出会い、コーチングに出会い、後輩が世界大会でアジアチャンピオンになる経験をして……やっぱり、人の可能性を引き出す、人が一歩を踏み出すために伴走することが僕の使命だと思いました。

今まで失敗も多くしてきましたし、迷惑をかけたこともたくさんあります。それでも、そんな僕にたくさんのことを教えてくれた、導いてくれた人がいたからこそ、成長をすることができました。

この心の底から湧き上がる感謝の気持ちをもとに、今後はコーチングを提供することで、クライアントの成長と幸せに伴走していきたいと強く思っています。

[取材]大門史果 [文]米澤智子 [編集]青木まりな [撮影] 伊藤圭

Beingは、
ひたむきに生きるビジネスパーソンが打ち明けた、
純粋な願いたちを集めました。

人として、組織として、社会として、
本当はどう在りたいか。

組織と事業の成長、取り巻く環境変化のなかで
ときに矛盾や葛藤、経済合理性にもがきながら
彼らがBeing-在り方-を磨いてきた過程とは。

ここでしか語られることのない
飾らない言葉たちを分かち合います。

さあ、本当の願いからはじめよう。

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