【課題・導入背景】・メンバーの “自立し、自戒する力” を育む上で、個々の内省促進だけでなく、マネジメント層の関わりをアップデートする必要があると考えた・マネジメントやクライアントのコンサルティングなど、多方面において内発的動機づけを促すコーチングに価値を感じた・旧組織のカルチャーに馴染んだ職員に、内省や対話のスタンスを学ぶ機会を提供したいと考えた【導入内容】・1on1コーチング・コーチ養成講座受講(Entry~Advance)・短期1on1研修(マネージャー向け・現場リーダー層向け)・ストレングスファインダー研修(若手メンバー向け)【成果】・マネージャーの聴くスタンスが変化した・若手メンバーが自信を持って自分の意思を表明し、アクションするようになった・全社で、1on1に関する共通認識が生まれた今回お話を伺ったのは、株式会社FCCテクノ。同社は、現代表の西村さんが代表に就任された2021年から、メンバー一人ひとりの想いを大切にする組織文化の醸成に注力し、内省のカルチャーを育まれてきたようです。“メンバーが自律的に生きる力をつけていくこと”を目指すなかで、個々人の内省だけでなく、マネージャーがメンバーとどう関わるかが重要だと考え、そのアプローチとしてコーチングに興味を持たれました。ZaPASSコーチングに対してどのような価値を感じられたのか、取締役 緒方 伸一さんとCEO室 中元 曜子さんにお話を伺いました。自分の人生のために働く会社、FCCテクノ――はじめに、FCCテクノ(以下、FCC)の事業概要や組織文化について教えてください。緒方さん:FCCは、福岡に本社がある老舗のIT企業です。今期で63期目を迎え、コンサルティング、SI、BPOの3本柱で事業を行っています。中元さん:会社の文化として特徴的なのが、会社のために働くのではなく、自分の人生の指針を見つけ出すために働くという考え方です。自分の人生を生きるなかで、何らかの縁でFCCという箱に入った人たちが、自分のやりたいことと会社のチャンスをマッチングさせ、個人も会社も共に成長することを目指す組織文化があります。この文化は、西村が代表に就任した2021年から土台作りを進め、徐々に醸成されてきました。緒方さん:西村の考え方の土台として、FCCでは5つのカルチャーを掲げています。緒方さん:これらのカルチャーを通して私たちが目指していきたいのは、「好きな人と、好きな場所で、好きに働く」というスタンスです。そのために、“自立し、自戒できる力=生きる力”をつけて、しっかりバリューを出していく必要があると考えています。西村の言葉を借りると、新卒1年目だろうが大人扱いをして、権限とセットで機会と責任を与えていき、バリューを提供できた人にはしっかり報酬を出していく方針を持っています。また、行動レベルでは、内省を大事にしている会社です。自分が何にどれくらい時間を使ったか、生産性についてどう感じたかを日々自由に書ける社内のシステムがあり、メンバーたちはそこで日々内省を行っています。――お二人の役割を教えてください。緒方さん:私は会社全体の組織作りに加えて、約90名が所属している、コンサルティング・SIを担う事業部(Solution部)の統括を務めています。Solution部はリグロースが必要な時期なので、新しい事業を生み出していくための体制を整えている最中です。そのなかで、一人ひとりの生きる力を育む機会を提供したいと考えています。中元さん:私はHRとして、採用や研修、勤務制度作りなど、人にまつわるあらゆることを専任で担っています。事業部を牽引する方々と、バックオフィスの実働部隊であるAdministration室との架け橋となり、今回の研修のような企画や、採用・育成・人事制度などのブラッシュアップを行っています。――ZaPASSコーチングに関心を持たれた背景を教えてください。緒方さん:直接的なきっかけは、FCCのメンバーから管さん(ZaPASS共同創業者:管 大輔)を紹介してもらったことです。そこでZaPASSコーチングのことを知り、話を聞けば聞くほど元々持っていた課題感に重なったので、個人的に受けてみたいと興味を持ちました。西村の後押しもあり、まずはお試しとして私が3ヶ月間個人コーチングを受けさせてもらい、その後に他の研修も受けてみようと広がっていった形です。――どのような課題意識を持たれていたのでしょうか?緒方さん:FCCは生きる力をつけていくために、メンバーに対して自立と自戒を求めていく会社です。ただ、そこに至るために個々人の内省だけでは限界があるのではないかという課題意識がありました。内省によって自己理解は進みますが、その一歩先の自己肯定感や自己効力感の部分は満たされないと考えていたんですよね。“生きる力がついた状態”は、マズローの5段階欲求説の自己実現の領域に相当すると考えています。FCCのメンバーは本当に真面目で責任感が強い方ばかりですが、特に若手のメンバーの多くは安全の欲求と社会的欲求のあいだを行き来している段階にあり、新しいことへのチャレンジに手が挙がりづらい状況にありました。そこで、我々マネジメントメンバーが対話のなかで彼らの行動を承認することで、組織への帰属意識や貢献意欲を高め、内発的な気づきを促せるのではないかと考えたんです。また、若手に限らずベテランメンバーにおいても、西村が就任する前の、強いトップダウンのマネジメントスタイルが染み付いており、自立と自戒に向かうスタンスや在り方の理解が追いついていないという課題意識がありました。さらに、マネジメントの場面だけでなく、クライアントに対するコンサルティングにおいても外的な動機づけに限界を感じていたため、マネージャーがコーチの在り方や作法を身につけることで、これらの課題を解決できると考えました。相手の話を聴くための時間をセットし、チャレンジ精神を引き出す――緒方さんは、コーチングを受けられた後、ZaPASSコーチ養成講座にて約6ヶ月間コーチングを学んでいただきました。どのような気づきや変化がありましたか?緒方さん:講座を受けた後から、メンバーと1対1で話す機会を意識的にとるようにしています。目先のやるべきことがあると、その課題に忙殺され、相手の話を奪ってこちら側のしたい話をしてしまう。そこで、“〇〇さんの話を聴く時間”など、相手に焦点を当てる時間を意識的に設ける必要があると感じました。相手の悩みにスポットライトを当てることで、新しくやっていきたいことや、本当はやりたいことを聴くことができて、すごく良いなと感じています。今後もそういう機会を増やしていきたいですね。中元さん:緒方の予定表を見ると、とても忙しいなかで、入社して数年のメンバーの方々と1on1の時間を取っていて。社内のメンバーと密に向き合っているなと感じています。特に若手にとっては、いろいろな問いかけをもとに話を聴いてもらえるので、見てもらえている安心感から「話していいんだ」という心理的安全性が生まれ、新しいチャレンジに手をあげる機会につながっていると思います。中元さん:実は、私も緒方に助けてもらっている1人なんです。「HRのことを考える時間をとりましょう」と声をかけてもらい、2時間程度話をしました。コーチング的に私の想いを聴く場を作ってくれたんだと後から気づきました。私の想いを受け止め、ビジネスの枠を超えて「どうしていきたいか」と問いを投げてもらえることで、日々忙殺されていたところから一歩引いて、自分の立ち位置やFCCでこの先何をしたいのか考えるきっかけをもらえたと感じています。――コーチ養成講座を受講いただいた他メンバーの方々の変化は、いかがでしょうか?中元さん:事業部を統括するメンバーの一人からは、「答えありきで話すのではなく、一旦待つ」、「気持ちを引き出してから言葉を添えてみる」というように、メンバーと関わるスタンスが変わったと聞いています。何かあったらすぐに駆けつけて夜遅くまで話を聞くこともあるようで、客観的に見ても1on1の時間を意識的に増やしていると感じます。緒方さん:クライアントワークの比重が大きいメンバーの方々からは、クライアントとのセッションのなかで傾聴マインドを意識して向き合っている印象を受けています。また、彼らと話していて良いなと感じるのが、共通言語を持てることです。対人関係にはフレームワークや共通言語があまりないイメージでしたが、コーチング講座で学んだ内容を共通言語として理解し合いながら意見交換できるので、その点でもすごく良さを感じています。コーチ養成講座を受けた人間が1番変化すると思っているので、徐々にコーチングを学ぶメンバーが増えていき、そのメンバーが軸になって新しい組織を作っていけるのではないかと考えています。――コーチング導入時は、若手を含めたメンバーへの影響も期待いただいていましたが、チームや組織のメンバーに変化はありましたか?緒方さん:継続的に1on1を実施したメンバーは、明らかに目の色が変わったと感じています。これまで迷子になっていたメンバーが、「こう在りたいんだ」としっかり意思表示をして、自分の方向性に自信を持っていて。その発言が行動にもつながっているので、すごく嬉しい変化だと感じています。業務の枠に囚われない1on1の浸透――6ヶ月間のコーチ養成講座の受講に加え、より多くのメンバーに向けた短期間の1on1研修も導入いただきました。この背景も教えてください。中元さん:1on1についての考え方は人それぞれあるものの、1対1で面談をするとなると、ティーチングに意識が向くメンバーもいたんですよね。マネジメント層の方々が「1on1は、内省を促すためのもの」という共通認識を持つ必要があると感じて、まずは人事評価に関わる方を中心に1on1研修を受けてもらいました。その後、1on1についての理解を全社で深めて共通の視点を定めていきたいと考えて、現場リーダー層にも導入しました。――1on1研修導入後に感じられている変化はありますか?中元さん:「1on1は信頼関係が必要だから、業務の枠にとらわれずお互いを知ることが重要だ」と学ばれた方がいたのは、すごく嬉しかったですね。また、日報の報告を見ると、研修後もしっかりアクションを継続されている方が多数いましたし、1on1で話し手となった方が「1on1を通して気持ちを整理できました」と感謝を綴っているのも見かけました。少しずつ効果が出ていることを実感しています。アクションにまでつながったのは、研修受講メンバーの方々が真面目に取り組んでくれたことももちろんですが、研修の立て付けとして、1日目と2日目の研修の間に練習期間があったり、練習期間中も講師の方からテキスト上でコメントやアドバイスをしていただけたりというサポートの仕組みがあったからこそだと感じています。緒方さん:受講対象者のなかには、コーチングを馴染みのない考え方やスタンスだと感じる方もいたと思います。社内で内製した研修ではなく、外部のコーチに来てもらう研修は、そういった方々にも受けてもらいやすかったですね。1on1についての共通認識が生まれれば、あとはやりながら高め合えると思っているので、とてもありがたい機会でした。等身大で歩む、人間らしい組織へ――さまざまなZaPASSのコーチングサービスを導入いただいて、組織全体として感じられている変化があればお聞かせください。緒方さん:立ち止まって振り返ったり、未来に想いを馳せたりする時間の大切さを理解できて、組織全体でそういう話をする機会がすごく増えました。また、特に若手の方は、今まで出口がなかったもやもやについて「相談の時間が欲しいと言っていいんだ」と感じているのではないかと思います。中元さん:年末に振り返りをしたり、やりたいことリストについて話題にしたり、自分について考える時間を持とうとするメンバーが確実に増えたと感じています。――コーチングの導入に際して、効果が出るまでの時間軸をどう捉えるか、会社の成果にどう寄与するのか、悩まれる企業の方もいらっしゃると思います。お二人はどのように捉えられていますか?緒方さん:人はすぐには変われないものだと思っています。短い期間で強制的に変えようとすると、結局内部の変化が伴わず、本来達成したいものが抜け落ちてしまうと思うんですよね。我々のカルチャーにも“AGILITY(とにかく素早く、まず動く)”があり、速さは、信頼を勝ち取る手段として必要な要素だと思います。ただ、時間を無理に短縮すると不自然な流れによって異変が生じるので、大事なことだからこそ、組織のシフトには時間をかけていくべきだと考えています。中元さん:私を含め、組織のことを等身大で考える人が多いなと感じています。何かをするときに、目標だけが一人歩きすることはあまりなくて、実行する自分たちの目線で議論し合っています。時間がかかることをみんなが受け入れて、人間らしく生きていると感じます。緒方さん:成果のつながりについては、「好きな人と、好きな場所で、好きに働く」をFCCのゴールとしたときに、それを達成できる投資ならOKだと考えています。もちろん、変化を観察する必要はあると思っていますが、なかなか測りづらいものなので。すでに現れている定性的な変化はすごく良い傾向にあるので、これを続けていった結果、人の成長やビジネスの成果にもつながっていくと考えています。中元さん:FCCは、新規採用しているメンバーも、長年働いているメンバーも、クライアントのために貪欲になれる・根性があることが共通点です。お尻を叩かなくても自ら伸びる素地がある方ばかりなので、内面的に働きかけることで、その人の成長につながるし、会社の業績にもつながる、というイメージが持てる。だからこそトライしてみようと思えています。代表の西村としても、ただ業績をあげるだけではなく、中の人がどう成長するかに関心を持っているので、その相乗効果で、我々は会社にコーチングを導入することに大きな抵抗がないのかなと思います。――今後の展望を教えてください。緒方さん:これからの時代、スキルはAIが担うようになり、どう在りたいか、自分をどう表現するかが重要になってくるので、会社のなかで理想像やありたい姿を描く時間をさらに設けていきたいと思っています。直近では、対話文化を醸成するために『イマココ』という施策を始めています。これは、聞き手と話し手にわかれて定期的に1on1をするものです。業務上の報連相ではなく、聞き手が問いを投げかけながら、話し手が振り返りや内省をする場です。人事評価に関わらない前提で、終わり方や行動宣言にはこだわらず、自己開示できる関係性・場をつくることを目的にしています。これまでは人事評価にまつわる振り返りが中心だったせいか、普段の会話量が少ないことも課題だったので、これを期にコミュニケーションが盛んになっていくと良いなと思っています。また、若いメンバー向けに導入したストレングスファインダー研修がとても好評だったので、全体に広げていきたいと考えています。お互いの特性を理解しあった上で業務上のコミュニケーションをすれば、より円滑に進むこともあると考えています。中元さん:私は、若手も長年働いているメンバーも、良い意味で自分自身について悩むことができる組織。つまり、自分が働く意味を考えられて、自分なりの指針が持てる組織になっていくと良いなと思っています。最初は小さなところからでも良いので、自己開示を続けていくことで自分の働く意義を見つけられたら、人間らしくて、すごく良い組織になっていくのではないかと感じています。[取材] 大門史果 [文] 橋野貴洋 [撮影] 須藤啓介