ZaPASSで活躍するコーチに、コーチになったきっかけやコーチングへの想いを聞く連載。今回は、河西克彦さんのインタビューです。▼プロフィール河西克彦 プロフェッショナルコーチ大学卒業後、航空会社系列の総合商社に入社。2004年、羽田空港第2ターミナルオープンに際し、新規事業のスターバックス コーヒーの国内フランチャイズ第1号店のストアマネージャーにアサインされる。コーチングをベースとした店舗運営や人材育成を実践し、店舗数の拡大に貢献する。2012年6月から本格的にコーチ活動を開始。その後、学習塾のフランチャイズ本部でスーパーバイザーとして10年に渡り約80名の経営者をサポート。2022年4月からプロフェッショナルコーチとして独立。コーチングでスタッフの目が輝き、活気あふれる店が生まれた――コーチングとの出会いについて教えてください。コーチングに出会ったのは、新卒入社した総合商社で新規事業に参画したのがきっかけです。その新規事業は、羽田空港第2ターミナルのオープンに合わせ、スターバックス コーヒー ジャパン株式会社とのフランチャイズ契約による、スターバックス コーヒーの国内初のフランチャイズ店舗を運営するというもの。私はその店舗のストアマネージャーとして、直営店の運営ノウハウを学ぶ機会を得ました。同社の店舗運営や人材育成はコーチングをベースとしており、そこで初めてコーチングを知ったのです。フランチャイズ店舗でも実践してみたところ、店舗運営は軌道に乗り、店舗数も増え、事業として拡大できました。この新規事業に携わる前も、マネジャーとして店舗運営に携わっていましたが、スターバックス コーヒーで働いているスタッフは、目が輝いているように感じました。自分から率先してお客様のために動き、いろいろなことにチャレンジする。店内には活気があふれていたんです。それを見て、「コーチングはすごい」と思いましたね。――なぜスタッフの目は輝いていたのでしょうか?自分の意思や目的意識を持って働けていたからだと思います。一般的に、会社員であれば会社から一方的に数値目標を課せられたり、店舗スタッフであればとにかく店舗業務を滞りなく遂行することを求められたりするケースが多いと思います。しかし、コーチングをベースにしたマネジメントでは、「あなたはどう思う?将来どうなっていきたい?」などの問いをベースに、自分の内側にある目標や目的をはっきりさせていきます。マネージャーは事業や店舗のゴールも率直に共有し、重なる部分をすり合わせ、スタッフとともにより良いゴールを目指していく。そういった「聞いてもらう」体験が、活気につながっていたのだと思います。もともと私は人の話を聞くことが好きで、「相手のなかに答えがある」という考えのもと、問いをベースに関わっていくコーチング的なマネジメントスタイルにすんなり入っていけました。そんな経験から本格的にコーチングの勉強を始め、2012年には会社に勤めながらコーチ活動を開始。2022年にプロフェッショナルコーチとして独立しました。転職先でも感じた、コーチングベースのマネジメントの有効性――コーチングをより深く学んでみて、どのように感じましたか?マネジメント業務にコーチングを取り入れる場面でも、コーチとしてクライアントさんに接する場面でも、「聞いてもらう」ことは非常に大切なんだなと感じます。にも関わらず、多くのビジネスパーソンにはその体験を得る機会がほとんどありません。転職先である学習塾を運営する企業では、フランチャイズ展開している塾の経営者や運営責任者とやり取りするスーパーバイザーという立場になりました。そこでもコーチング的な関わりは有効だったんです。学習塾のブランドを守りつつ、それぞれの経営者が目指すところを聞き、共通の目標を見つけ、目標達成に向けて一緒にアプローチする。その結果、より良い塾運営ができるケースが多くありました。関わるなかで感じたのは、経営者や責任者は孤独な一面があり、話を聞いてもらえる機会が少ないということ。利害関係が少ない相手だからこそ言える話もあり、話すこと自体に効果や意味があったと思います。「河西さん、実はこんなことを考えているんだ」とこっそり打ち明けてくださるケースもありました。お店のスタッフでも経営者でも話を聞いてもらう機会が少ないのなら、おそらくビジネスパーソン全体も同様でしょう。世の中には、もっとコーチング的な関わりが必要です。また、そういった率直な対話をするためには、「感情を含めて伝える」ことが大事だと考えています。ビジネスの場面では、事実やロジックにもとづいて客観的な視点で考えることが大事にされがちです。しかしながら、物事の捉え方、態度や話すことには必ず感情がつきまといます。そして、感情を正確に想像し、捉えるのは難しい。そこで感情含めて伝えると、相手にとって見えなかったものが見えて、素直に受け取れたり納得できたりすると思うんです。たとえば、本当は忙しいのに「これやって」と頼まれてつい引き受けてしまい、後から「こんなに忙しいのに」とイライラしたり、結局人の手を借りることになった経験はないですか?これはまさに私の体験なのですが、そんなときに「できません」と断るのは言いにくいですよね。そうではなく「忙しくて余裕がないんです」と言えば、背景の事情までわかってもらえます。自分の感情を大事にすると、言いづらいことも相手にはっきりと伝えられるようになります。ですから、感情を伝えることはとても大事です。人は常に変わりつづけるからこそ、その時のその人に関心を持つ――河西さんがコーチングをするうえで、大切にしていることを教えてください。私は「自分で考え、自分で決め、自ら行動する」ことで、人は幸福感を高め、自分で自分の幸せをつくれると考えています。そのために、クライアントが安心して自分のストーリーを語れる対話の場を作りたい。そこで、コーチングの際は次の4点を大切にしています。1つ目は、「相手の話を評価や価値判断をせずに聞く」こと。世の中に「絶対」はないと思っています。同じ出来事でもとらえ方次第で、正しかったり間違っていたり、良かったり悪かったりする。たとえば僕が、「すごく良いですね」「あなたは間違っていますよ」と言ったら、クライアントは話すこと自体ためらってしまうかもしれません。一人ひとりの大事にしていることや真実を尊重していきたいと思っています。2つ目は「わかったふりをしない」こと。たとえば、「コミュニケーションが大事」という話が出たとします。ただ、コミュニケーションと一言で言っても、それが指している事柄は人それぞれ違うでしょう。私が「コミュニケーションは人と人が会話していること」だと思い込んでいたら、クライアントは話したかったことが話せなくなってしまうかもしれません。場合によっては、的外れな質問をしてしまう可能性もあります。だから、もしわからないことがあれば素直に尋ねるようにしています。3つ目は「自分の内側で起きていることに気づく」こと。クライアントの話を聞いているときには、私のなかにもさまざまな感情が生まれます。クライアントにフィードバックをするときは、私自身が感じたことも率直に伝えています。たとえば、「お話を聞いて、悲しい気持ちになりました」と伝え、「そう聞いて、あなたはどう思いましたか」と尋ねる。それによって、クライアントは自分だけでは気づけなかったことに気づくきっかけになります。最後は「相手に興味や関心、好奇心を持ち続ける」こと。人は毎日生活をしていれば変わっていくと思います。その人自身も変わりますし、取り組んでいることやその人を取り巻く状況も変化します。そこに現在進行形で関わっていけるのがコーチだと思うので、セッションのときはその人がどういう状況なのか、興味や関心を持ち続けて接しています。セッション中でも、何かその人自身の変化を感じとったら、伝えることを心掛けています。そこに存在しているだけで心を軽くする「ご神木」のようなコーチになりたい――今後はどんなコーチを目指していますか?「ご神木のようなコーチ」、そして「挑戦し続けるコーチ」ですね。少し想像してみてください。ご神木の前でそっと目を閉じ深呼吸する。すると、抱えていた悩みがスッと軽くなる。そんな経験をしたことはないですか?私がお世話になっているコーチは、まさにそんなご神木のような方。その方と話すと、コーチに向かって話していたはずなのに、自然と自分から話し、勝手に自分で答えを見つけたような気持ちになります。コーチングのベースには、「答えはその人の中にある」という考え方があります。この考えを心から体現することで、そういった体験を提供できるコーチになりたいと思っています。挑戦し続けるコーチを目指したい理由は、そのほうが自分も幸せですし、コーチとしてクライアントに伴走していくにあたってもプラスになると考えているからです。クライアントのチャレンジをサポートしていくにあたり、実際に自身もチャレンジをしているコーチであれば、セッションのなかでよりクライアントを勇気づけたり、背中を押したりできるのではないかと考えました。具体的なチャレンジとして、今年10月には、コーチ・エィ アカデミアのクラスコーチとしてデビューしました。コーチを始めて7、8年経った頃、世の中にもっとコーチング的な関わりを増やしたい、そのために貢献したいと思うようになり、クラスの参加者とともに学び合おうと決意したんです。こんなふうに挑戦を続けることで、さらにコーチとしても学びを深め、ご神木のようなコーチに近づいていきたいですね。[文]清水智子 [編集]青木まりな [撮影] 伊藤圭[撮影場所] Nagatahcho GRiD