【課題・導入背景】・メンバーが増え、社内コーチが希望者全員のコーチングをすることが難しい・いつでもコーチングを受けられる状態をつくりたい・コーチの選択肢を広げ、一人ひとりにマッチしたコーチをつけたい【導入内容】・1on1 コーチング(マネージャー)【成果】・1300人全員がいつでもコーチングを受けられる「一人ひとりの生産性をあげ、成果を最大化したい」と考える経営者、マネージャーは、多くいらっしゃるのではないでしょうか?その問いに正面から向き合い、2016年に人事制度として社内コーチング制度を導入したのは、営業DXサービス「Sansan」やインボイス管理サービス「Bill One」などを手掛けるSansan株式会社(以下、Sansan)。社員が社員をコーチングするユニークな施策は、社内の部活として始まり、人事制度へ。会社の成長に伴い、社内コーチングの需要も拡大したため、社内コーチ制度に加えて、外部コーチ制度としてZaPASSの1on1コーチングも導入。今回は、社内コーチング制度導入に尽力され、発展に寄与されている同社 人事本部 Employee Success部 Learning & Developmentグループの三橋 新(Mitsuhashi Arata)さんに、社内コーチングが制度になった背景、活用法、外部コーチとの違いについて、お話を伺いました。社内コーチングは、安全な「踏み込み場」―― 三橋さんは、どのような役割を担っていらっしゃいますか?人事本部 Employee Success部 Learning & Developmentグループに所属し、社内コーチとして活動しています。Employee Success部は、新入社員のオンボーディングや社内研修の実施、カルチャーの醸成を担う部門です。Learning & Developmentグループでは、個人や組織・チームがよりパフォーマンスを出すためのプロセスと、中間管理職の成長を支援し、マネジメントがさらに機能するプロセスの2つに関わっています。―― Sansanの社内コーチング制度「コーチャ」はどのように始まったのですか?「コーチャ」は、2016年に社内コーチング制度としてスタートしました。コーチャが始まったのは、当社社長と当時の人事部長が「Sansanがさらに伸びていくために何が必要か」を話し合ったことがきっかけでした。2016年当時、今ある「課題」に目を向けて解決をしていくことの積み重ねは、日々の経営の中で行っていました。「さらに成長したい」そう考えたとき、人や組織の「伸びしろ」に着目していこうという方向性が議論され、「健康促進」「オフィスのファシリティ改善」「コーチング」の3つが施策の候補に挙がりました。コーチングが施策の候補に挙がったのは、コーチングは人や組織の可能性にフォーカスし、そのうえで行動を促す関わりをしていけるからです。当時、私は社内の部活としてコーチングを実施していました。体験者数もリピートも多く、評判がよかったので、「コーチングを制度化しよう」と実績を認めていただき、社内制度としてスタートしました。―― 現在の運用はどうなっているのでしょうか?現在、複数の社内コーチが個人向けのコーチング「コーチャ」、チーム向けのコーチング「コーチャチーム」を行っています。入社時のオンボーディングで社内コーチング制度があることを伝えており、基本的には全社員がコーチングを受けたいタイミングで受けられる環境です。―― 人材開発にコーチングを活用する理由を教えてください。個人やチームが挑戦するときの安全な「踏み込み場」を用意するためですね。個人が挑戦するときは、地面や踏み込める場所があると挑戦しやすいですよね。もちろん、踏み込み場がなくても挑戦できる人たちもいるでしょう。でも、基本的には挑戦は怖いし、不安になりますよね。「恐れ」の感情が出てくる。恐れている自分を認めつつ、挑戦するために、奮い立つ。そのとき、支えだったり、地面みたいに踏み込める場所が必要だと思うんです。それがコーチングなんじゃないかな、と。Sansanのバリューズに、「変化を恐れず挑戦していく」という行動指針があります。コーチングを活用することで、Sansanのバリューズを体現することにも繋がると考えています。マネジメントの一部を受け持つ“社内コーチ”だからこそ、できたこと―― チームコーチングでは、どのような関わり方を意識されていますか?チームがパフォーマンスを発揮できないとき「マネージャーが課題だ」という声が聞かれます。一般的に「マネージャーが全部やりなさい」という暗黙の前提があるから、そのような言葉が出てくるのだと思います。社内コーチは、事業内容や企業の背景についての共通理解があるため、チームコーチングという形で、直接現場へ入っていき、マネージャーをサポートすることができます。ですから、マネージャとは別のアプローチで、チームのパフォーマンスを最大化できるような関わり方を心がけています。また、上下の役割や関係性ではなく、「チームとして、どうしていくか」を意識することも大切にしています。なるべくニュートラルな立場で関わるので、マネージャーがずっと話をし、メンバーが発言をする機会がない状況が見受けられた場合には「マネージャーがずっと話していますね」とまず気づいたことを率直に伝えます。ずっと発言しない方がいれば、「このチームにはずっと喋らない方がいますね」とフラットな視線で印象を伝えます。―― 面白い関わり方ですね。実際にどのような成果につながっているのでしょうか?ニュートラルな立場で関わり、気づきをまず伝えることで、今のチームに何が起きているかという事実が明らかになり、「本当はこういうチームでやりたいんだけど、今はこういう状態なんだな」と認知できるようになります。チーム内で理想と現実とのギャップが明確になると、理想に向かって自走的に動き出すんです。また、「チームコーチングをしていくと、マネージャーが成長していく」と実感しています。たとえば、チームコーチングの場面で社内コーチが場を作ると、マネージャーが普段聞くことができていない内容をメンバーから得られることがあるんです。すると、マネージャーは「自分はこれについて、今まで聞けていなかった。なぜなんだろう?」と自分へ矢印が向き、内省が始まります。そこで新たな認識、気づきが生まれるので、直接的なサポートに加え、間接的にマネージャーが成長する大事なプロセスをサポートできます。―― 1on1コーチングでは、どのような関わり方をされていますか?最近、「究極的には、1on1コーチングの場で何か解決する必要はない」と感じています。改めて基本に立ち戻った感覚ですね。会社に所属していると、「コーチングの効果を定量的に見せて、成果に繋げたい」と頻繁に意識します。会社から期待されていますし、自分としても表現したいことなので。それは正しい認識ではあるけれど、コーチとして為すべきことではないかもしれない。本来は、徹底的に話を聞いてもらえる場があるだけで、メンバーにとっては大きな価値がある、と再認識しています。―― 徹底的に話を聞いてもらえると、どんなことが起きるのでしょう?ありきたりですが、気づきが生まれます。自分が感じていること、考えていることを、全て聞いてもらって言葉にする。そうすると、距離を置いて自分を認識できるので、気づきが生まれます。コーチングの価値を理解してもらえない導入に必要な“3つのキーワード”とは?―― コーチングを社内で広めていく上で、困難だったことはありますか?一番の困難さは「成果が出るまでのタイムスパンが長いこと」です。現実のビジネスでは、日、月、四半期OKRのように成果を図っていくのに対し、コーチングによる個人やチームの変容は、半年から1年かけて成果が現れる印象です。ビジネスとコーチングの時間軸のギャップがコーチングへの理解を難しくし、その価値を参加者ではない意思決定者に実感してもらうことが困難だなと感じています。しかも、「何がコーチングの成果か」と問われても、定量化しづらい。もちろん、社員が「コーチングの成果だ」と言ってくれるときもあります。ですが、100%コーチングの成果だと言い切れないところも困難な点ですね。―― たしかに、コーチングは成果が出るまでのタイムスパンが長いですよね。他には、どんな困難がありましたか?コーチングの価値を知らない人に価値があると理解してもらうのは、非常に難しかったです。コーチングを知らなかったり、コーチングに対して、私が持っている前提と違う前提を持っている人に「コーチングが最高だよ」と表現しても、なかなかわかってもらえない。特に、コーチャを立ち上げるとき、社内の意思決定者とわかり合っていくプロセスは困難でしたね。靴が存在しない島で靴を売る話のように、コーチングを認識してもらい、良さを理解してもらうのは大変でした。しかも、コーチングを始めたとき、私自身もコーチングの価値がはっきりとはわからなかったんです。「コンセプトや考え方・関わり方がいいな」と思いつつも、「コーチングってどんなもの?」という問いに対して、「一言で伝え切れない何か」としか答えられなかった。ビジネスを進めるとき、「戦略が大事だから、3C分析をしよう」とフレームに沿って考えることがありますよね?事例を探せば、山ほど成功事例も出てくる。コーチングも事例があれば、合意が得られやすいですが、「コーチングが大事だよね」と言っても、当時は全く事例がなかったので、合意まで辿り着くのが難しかったんです。―― 大きな壁に直面されたんですね。その壁は、どうやって乗り越えたんですか?壁を乗り越えるためには、3つのキーワードが大切だと思っています。1. 理解してもらう前に相手を理解すること2. たくさんの実績を積むこと3. ファンを増やすことまずは、「経営陣にコーチングの価値を理解してもらおうとする前に、こちらが経営が期待しているビジョンを理解すること」が大切です。当初、私も上手く表現できておらず、経営陣に「人の成長は数値では表しにくいし、わかりにくいものです」と言っていました。でも、それでは価値が伝わらないし、「社内でコーチングを浸透させていこう」とはなりません。コーチングの成果について、経営陣に伝わる形で表現していく努力が必要でした。現在もコーチングが会社のビジョンにどのようにフィットするのかを言葉にして伝え続けています。ずっと向き合い続けている課題です。2番目は「たくさんの実績を積むこと」です。他の仕事と同様、コーチングにおいても、数多くセッションを行い、実績を積んだ先に見えてくる世界があります。量をこなすことは「どれだけ失敗をしたか」と同義です。トライアンドエラーしながら学び、コーチ自身が実力をつけていくことが大切です。また、コーチングの経験を重ねると、社員からフィードバックをもらう機会も多くなります。フィードバックされた言葉を集めることで、コーチングが持つ可能性や価値を言語化できました。3番目は「ファンを増やすこと」です。私は「コーチャ」を利用してもらうための社内広報やマーケティングはあまりやっていません。その代わり、一つ一つのセッションに魂を込めています。コーチングの価値を信じる仲間を増やすために、最大限のパフォーマンスを出そうと思うからです。社員の成果としても、何らかの形で現れているのではないかと感じています。社員一人ひとりが、コーチングや私のファンになっていただけると、口コミが回っていくんですよね。ファンになってもらえたのは「コーチが責任を持って関わろうとしていると認めてくれたから」だと思っています。選択できるコーチの幅、マッチングの精度に満足―― 社内コーチング制度に加えて、外部コーチングサービスを導入しようと思った背景を教えてください。「社員にとっての選択肢を増やしたいから」が1つ目の理由です。コーチとしての自分の価値を信じていますが、ある意味、信じていない部分もあって。私たち社内コーチが社員にフィットすれば望ましい状態をつくれます。でも、フィットしないと、コーチング自体が始まらないと思っています。社内を知らない外部コーチだからこそ、話せる内容、話せる人もいると思っています。内部ではなく「外部」という部分に、大きな価値があると思うんです。私が描く理想は、どんな人でも当たり前にコーチングが受けられる世界。私がコーチングを始めた10年前は、エグゼクティブコーチングが主流で、セッション1回が数十万円もして、一般的な所得の個人では受けられないものでした。振り返ってみると、社内コーチという役割を開拓して、一般のメンバーでも、入社したばかりの人でも、いつでもコーチングが受けられる世界を作ってこれたと思います。もう1つの理由は、Sansanが成長してメンバーが増えていくスピードと、社内コーチの数が増えるスピードに差があるからです。社内コーチを増やそうと思っても、デビューするまでに、数カ月から数年コーチングを勉強する必要があります。そうすると、コーチングを受けたくても受けられないメンバーがでてきてしまうので「もったいないな」と思ったんです。スケールするために、外部の力も借りたいと思い、ZaPASSにお願いしました。―― コーチングプラットフォームのなかで、ZaPASSを選んだ理由を教えてください。ZaPASSには若くしてビジネスで活躍されてきたコーチが多くいらっしゃいます。Sansanの年齢層、サービス形態にフィットするコーチが多い印象で、相性がよいと感じています。―― ZaPASSのコーチングサービスを導入してみて、いかがですか?実施後のアンケートをみると満足度は一定して高い状態です。選択できるコーチの幅が広かったり、テクノロジーと人の両方を使って丁寧にマッチングしていただいているので、信頼してお任せしています。お客様をリードしていける人を育てたい―― 今後、社内コーチとして目指したいことを教えてください。Sansanのバリューズに「Lead the customer」があります。ビジネス的にお客様が気づいていない価値を導いていく。その関わりが全員に求められるという意味です。そのためには、一人ひとりのリーダーシップが大事だと考えています。正解のない混沌とした世の中やビジネスのなかで、答えはわからないけれど、一歩踏み出して挑戦していく。その小さい一歩でお客様をリードしていける人たちを育てていきたいと思います。当社のメンバーは、現在1,300人を超えています。1人1人が「Lead the customer」ができれば、素晴らしい価値を生みます。会社の期待に応えるだけではなく、期待を超えて一歩踏み出し、挑戦できる人を育てていきたいです。―― 最後に、三橋さんにとってコーチングとは、何でしょうか?私にとって、コーチングとは、二者間にある「関係性」です。関わり方ではなく、関係性だと考えています。なぜなら、元MIT教授のダニエル・キム氏が提唱する成功循環モデルに則り、関係の質を上げることで、思考、行動、結果の質が上がっていくと考えているからです。クライアントである社員とコーチとの間に関係性ができる。だからこそ、安心して自由に思考を巡らせ、小さな一歩を踏み出せる。挑戦できるから、結果として現れる。そう信じて、一人ひとり、チームに向き合い続けています。[取材]足立愛樹 [文]平谷愛 [編集]栗林杏子 [撮影] 伊藤圭--------◾️【法人でのコーチング活用に興味がある方はこちら】▼法人向けコーチングサービス『ZaPASS for Enterprise』・1on1コーチングプログラムhttps://zapass.co/business-coaching・コーチング研修プログラムhttps://zapass.co/business-coaching/training▼資料請求フォームhttps://zapass.co/business-coaching/request▼その他の法人でのコーチング活用事例https://zapass.co/blog/tag/case-business--------◾️