本田慎二郎|コーチ同志社大学を卒業後、パナソニック株式会社に入社し人事や経営企画に従事。空間デザイン会社 丹青社へ出向、営業や部門の組織変革を担当。パナソニックに復帰後、主に組織開発を担う。また、在職中は社内活性化の有志の会One Panasonicに所属し代表も務めた。現在は大手アパレル企業に転職。カスタマーエクスペリエンス構築、店舗業務改革を担っている。グロービス経営大学院にて取得したMBAの知見を活かし、自己変革・組織変革を目指すビジネスパーソン向けにパーソナルコーチングを提供。ZaPASS認定コーチ。人への興味と自身のビジョンが重なり、自然とコーチの道へ――本田さんは、なぜプロコーチになろうと思ったのですか?「学んだことを世の中に還元したい」というシンプルな思いで、ZaPASSのコーチ養成講座を修了した後に、会社員の仕事と並行してプロコーチとしての活動を始めました。ただその根底には、私自身のビジョンがあります。それは、「カッコいい大人が溢れる社会を作る」というもの。世の中にカッコいい大人を増やしたいんです。私が思うカッコいい大人というのは、「自分の仕事や担っている役割を大切な人に勧められる、自分の仕事に誇りを持てている大人」です。今、子供たちが将来就きたい職業として「YouTuber」や「プロゲーマー」等が人気ですよね。もちろんそういった職業も素晴らしいと思います。でも、世の中にはほかにも魅力的な仕事がたくさんあるのに、華やかで楽しそうな職業ばかりが注目を集めている。逆に、働くことや社会人になることに対しては、ネガティブな印象を抱いている若い人も多いですよね。それはちょっともったいないように感じていて。大人になることに前向きになれない背景には、いわゆる“普通”の仕事を頑張っている人々、つまり一緒に暮らす両親や電車で見かけるサラリーマンなど、子供の目に映る大人の大半が辛そうだったり、グッタリしているように見えるからではないでしょうか。まだまだ「仕事は辛くて当たり前」「社会人はしんどい」というイメージは根強いですが、僕自身は仕事は楽しいものだと思っています。そういったスタンスの大人が溢れる社会を作っていきたいんです。コーチングは、悩みや迷いを抱える方と1対1で向き合う中で、その人がカッコよく生きるためのサポートができるもの。会社員として自身が仕事を楽しみ誇りをもつことを実践するだけでなく、より直接的にカッコよく生きる人を増やせるからこそ、プロコーチとしての活動も大切にしています。第三者の視点を活かして「共創」することが、コーチングの価値となる――本田さんが考える、コーチングを受ける価値について教えてください。悩みや課題を自分1人で抱え込むのと、誰かと対話しながら考えるのって大きく違いますよね。その差こそが、コーチングを受ける価値です。一人で考えていると出口が見えず悶々としてしまいがちですが、対話であれば「どう苦しいのか」「どこに引っかかっているのか」を話しながら、思考を整理できる。自分の口から出てくる言葉で、自分の本音に気付くこともあります。悩みや迷いがあるときって一般的に「自己分析が有効」と言われたりしますが、そもそも一人で深く自己分析していくのって辛いものがあって。これまでの経験を振り返ることが必要不可欠ですが、そもそもトラウマになっている過去やネガティブな感情って、思い出したくもないじゃないですか。でも、過去や今感じている苦しみや憤りの中に、自分の価値観や理想が隠れていることは多くあります。だからこそ、自分と向き合うときには、となりで一緒に向き合おうとしてくれるパートナーが必要なんです。さらに、コーチがいることで、過去と向き合ったところから未来に広げることもやりやすくなると思っています。コーチは第三者の視点でクライアントを見ているので、対話の中で出てきた重要そうなキーワードを拾い上げたり、話している様子から内的な変化を読み取ったり、自分では見落としていた部分に気付いて光を当ててくれます。私は「共創」と表現しているのですが、クライアントから出てきたものにフォーカスし、コーチの視点での気付きを共有し、どんどん重ねて大きくしていくプロセスが大切だと思っています。一般的なコーチングって、クライアントとコーチの発言量が8対2くらいだと思いますが、僕はけっこう喋るほうかもしれません。もちろんセッションの内容や展開に応じてですが、6対4くらいの割合のときもあるくらい。「これはどう?」「こんな可能性は?」なんて、どんどん広げていくんです。クライアントも「それはしっくり来ます」「それでいうとこっちかも…」とリアクションを返してくれるのですが、そうした対話の中でクライアント自身が気付いていないやりたいことや、実現したい未来の欠片が一瞬顔を覗かせるんです。それを見逃さずに拾い上げて、「こんな視点もあるんじゃない?」と新しい方向を提案する。これって、一人で考えていたらきっと起こらないことですよね。自分では見逃してしまうような小さな輝きに気付き、拾い上げ、対話の中で共に磨く。こうして未来を広げるところまでが、コーチとの対話の価値なんだと思います。全力で傾聴。それがエネルギーの源泉を掘り当てる鍵になる――本田さんがセッションで大切にしていることはなんですか?心の奥底に眠っているエネルギーの源泉を、一緒に掘り当てることです。そのクライアントにとってのコアであり、そこにアクセスすると自然と力が湧いて、行動したくなってしまうようなところ。コーチとして、時に発破をかけるために強く背中を押すようなこともありますが、それよりもエネルギーの源泉を刺激するほうが重要です。その人のコアにたどり着くために大切だと思っているのが、全身全霊の傾聴です。全神経を相手に向けて、とにかく全力で「聴く」。そうすると、クライアントの表情や声の張り、繰り返し出てくる言葉などの変化に意識が反応するんです。その変化をフィードバックとしてお伝えすることが、クライアントの気付きに繋がり、その繰り返しによってコアにたどり着けるんだと思います。ただ、全てのクライアントが「自分のコアを見つけて、動き出したい!」という状態とは限りません。「やりたい」よりも「やらなきゃいけない」が前面に出て疲れきっていると感じたときは、まずは寄り添うことを第一にしています。まずは同じ目線で話し合える伴走者になろうと。私自身、会社員としても働き、マネジメントに近い立場も経験したのでよく分かるのですが、特に企業のリーダー層やマネージャー層は孤独を抱えています。気軽に腹を割って話せる相手はほぼおらず、常に気を張っています。だからこそコーチングを受けている時は、鎧といいますか、“心のパンツ”といいますか(笑)。そういったものを脱いで安らかに、本音で話せる場を提供したいですね。以前担当したクライアントの中にも、リーダーとしてどう在ればいいのか悩まれてる方がいました。その方は、助けてくれる人が自然と周りに集まるようなタイプだったんですが、同時に「もっと頼りがいがほしい」と言われ、無理に自分を変えようと苦労していたんです。しかし話を聞く限り、私にはその方が変わる必要はないなと感じられた。「そのままでいいし、それがあなたの魅力では?」と改めて話したところ、クライアントが涙を流して。少し頼りないかもしれないけれど、その分周りを巻き込み、それぞれの得意を活かし合うチームを作れる。そんな自分の持ち味を受け入れはじめました。鎧を脱ぐって、こういうことですよね。「こうしなきゃ、ああしなきゃ」という義務感を元にした行動から、「こうなりたい、これがしたい」というエネルギーから生まれる行動へ。寄り添いながら伴走したいですね。「カッコいい大人」であるために、これからも自分自身を深めていく――今後、どのようなコーチになっていきたいですか?引き続き、「カッコいい大人が溢れる社会を作る」というビジョンを持って、コーチングを続けていきたいです。カッコいい大人が溢れたら、大人になることに対してみんなが前向きになれます。そうやって自分のやっていることに誇りを持っていれば余裕も生まれて、他者の「やりたいこと」を互いに尊重しあう優しい世界へ近付くと思うんです。子供だってきっと、「早く大人になりたい」と思うことでしょう。そんなワクワクできる社会に向かいたいですね。それを実現するためにもコーチングの技術を深めて、クライアントのコアに辿り着く精度を高めたい。そしてビジネスマンとしても、よりレベルアップしたい。リーダー層やマネージャー層が直面する“しんどいこと”を自分で経験して初めて、その方のパートナーになれますから。もっともっと、自分自身を深めていければと考えています。[取材・文]山﨑浩司 [編集]青木まりな [撮影] 伊藤圭※撮影場所:NagatachoGRiD