コーチングセッションを継続していくと「言語化が苦手⋯」「セッションのテーマが見つからない」という悩みを持つ方が少なくありません。どうすれば、より効果的なセッションにできるのでしょうか?その悩みをジャーナリングで解決していたのは、杉之原 明子さん(特定非営利活動法人みんなのコードCOO、アディッシュ株式会社取締役)。4年間ジャーナリングを継続した杉之原さんは、何もないと思っていたご自身の中に“ライフミッション”を見い出されたそうです。そんな杉之原さんに、ジャーナリングのやり方、効果、コーチングとの関係性についてお聞きしました。▼プロフィール杉之原 明子さん2008年、株式会社ガイアックスにインターンとして入社。学校非公式サイト対策事業の立ち上げ及び責任者。2014年、アディッシュ株式会社を設立・取締役に就任し、コーポレートの構築及び上場準備の旗振り役を担う。2021年に、特定非営利活動法人みんなのコードCOOに就任。ITベンチャー意思決定層の多様化に取り組むスポンサーシップ・コミュニティ代表発起人。スローガン株式会社、株式会社Kaizen Platform社外取締役。ジャーナリングで感情をキャッチする―― ジャーナリングを始めたきっかけを教えてください。きっかけは、自分の成長の仕方もわからないほどの無力感でした。2019年、心身ともに疲れ果てていたんです。当時、アディッシュの管理部門で、自分よりもプロフェッショナルなスキルを持つメンバーを率いて上場に向かっているところでした。私には管理部門の経験がありませんでしたので、メンバーに教えられることはなにもない。自分ができることなんて、何もないと思っていました。そんなとき、社会人学生として通っていた大学で「文章講座」を受講しました。「事実を羅列するのではなく、感情を起点に文章を書きなさい」と教わったんです。「感情だけはオリジナルなので、その感情をみなさい」、と。それから、事実ではなく自分の感情に矢印を向けてみました。でも、喜怒哀楽が出てこなかった。映画を見ても「普通だった」くらいの感想しかなくて。私は感情をキャッチする感度が低いと気がついたんです。振り返ってみたら、私は昔から内省や感情に目を向けることから逃げ続けてきました。就職活動でも「内省しなきゃ」と思い初めて取り組んでみたのですが、どうしても出来なくて。自分の強みや弱みもわからなかったし、言語化も出来ない。自分の痛みに触れたり、見たくない自分に向き合うことにも抵抗感がありました。でも、自分がリーダーやマネジメントとして仕事をしていくうちに、どうしても「うまくいかない原因が自分にある」と思わざるを得ない出来事が何度もありました。自分の痛みの蓋を開けないと前に進めない。このまま逃げていても、自分も会社も成長しない。ようやく内省の必要性を認めたのも2019年ころでした。その後、佐宗 邦威さんの『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』を読みました。ジャーナリングに言及してる箇所を読んだとき、自分の中で点と点が繋がった感覚が沸き起こったんです。私には感情を書いていくことが必要だと確信して、ジャーナリングを始めることにしました。正解は一つじゃない無理なく続けられる“私流のやり方”で継続―― どんなやり方でジャーナリングをしていますか?ジャーナリングを開始した当時、佐宗さんが著書で仰っている通り、10分間でノートの片面をとにかく埋めようとしていました。ルールは「毎朝ノート1ページ分に書く」だけ。当時は、会社に着いて「今、私はどんな気持ちだろう?」と問いを立て、書いていました。でも、正直、感情から書き始めるのが難しかった。朝8時に「私、今喜んでるのかな?」と考えても、全然わからなかったんですよね(笑)。なので、まず頭の中に引っ掛かっている出来事や現象、誰かの言葉、本の一説など、頭に浮かんできたものを書き、「なぜこれが気になるんだろう?」と理由を書くことにしました。書きながら、感情にアクセスすることもあれば、しないこともあります。気持ちの赴くままに「なんでだろう~?」と気負わない気持ちで問いを立て、書き綴っています。※杉之原さんのジャーナリングノート気持ちの赴くままに書いているので、あまり深さはないかもしれません。佐宗さんの本には「お気に入りのノートを使いましょう。ちょっとテンションを上げて、最初は正解などを考えず、まずは続けることをやっていきましょう。」といったようなことが書いてあったんですよね。だから、やり方に対して正解・不正解のジャッジはせず、続けることにフォーカスして書き続けています。自分を深堀りするために「なぜを5回繰り返す」みたいなことは、やらないですね。今ではジャーナリングのやり方も変え、時間帯も変わりました。以前、朝に書いていましたが、夜に書くこともあります。今は夜の方が多いくらいです。“書きっぱなし”のノート1年分見返したらライフミッションが見つかった―― ジャーナリングを始めたとき、どんな効果を期待しましたか?ジャーナリングを始めた当初、「効果は何か」をあんまり考えないようにしていました。一日のジャーナリングで人生が変わるわけないと思っているので、あまり期待していなかったです。「まずはやってみよう」と。でも、私は「継続力は誰にも負けない」という信念を自分の中に持っているので、続けていけば何か変化するのではないか、とは思っていました。―― ジャーナリングを開始して、効果を実感し始めたのはいつ頃でしたか?ジャーナリングを始めた1年後、ライフミッションを作ったんです。2020年5月くらいのことです。1年分のジャーリングを見返して印象に残る言葉を付箋にどんどん書いていき、マッピングしていって。ライフミッションを作るまで、ジャーナリングはいわゆる“ゴミ箱”のような存在だったかもしれません。書きっぱなしだったんです。でも、1年分を見返してみて大きな気づきがありました。それまでの私は「自分にはミッションがない」とコンプレックスを抱えて生きてきました。でも、ジャーナリングで貯めた言葉を集めてみたら、ちゃんと自分にも“ライフミッション”があった。「ライフミッションって、ちゃんと自分の中にあったんだ。言語化することをサボっていただけだった」と実感しました。―― 4年間ジャーナリングを継続して、変化はありましたか?※4年間で積み重ねたジャーナリングノート 私は、月1回の頻度でコーチングを受けています。コーチングで扱うテーマが変わりました。ライフミッションを作った後、コーチに自分のライフミッションと事業計画書をプレゼンテーションしたんです。そうしたら、コーチから「何でそういう事業計画になったんですか」と聞かれ、どんどん深く話をしていきました。セッションが終わった後、ふと気がつきました。コーチングのテーマは、必ずしも問いでなくてもいい。ジャーナリングで現象から書いていくのと同様、コーチングのテーマもずっと引っ掛かっている現象や事実でもいいんだ、コーチと一緒に感情や深さにアクセスすればいいんだと。自分の中から湧き出した「私が表現したいこと」を言葉にするということをコーチングセッションで扱ったことがきっかけで、今まで私の中にあった「コーチングの時間に向けて問いを準備しなきゃいけない」という呪縛から解き放たれました。―― ジャーナリングを始める前、「内省が嫌いだった」と仰っていましたね。今はどうですか?内省が嫌いな気持ちは0(ゼロ)になりました。以前は内省が出来ないことがコンプレックスというくらい、嫌いでした。それを思うと、奇跡的な変化を遂げたと思います。自分の痛みについても、感じ方やマインドが大きく変わりましたね。今思えば、以前は痛くても痛くないふりをしていたんです。「痛いけど、大丈夫」と自分で自分に信じ込ませていて。でも、今は「痛いものは痛い」と感じられる。痛いと感じている自分を素直に認められるようになってきました。そうすると、人の痛みにも自然と共感できる私に変化していきました。自分の痛みから目を背けていたときは、他人の痛みもわかったふりをしてやり過ごしていたのに。痛みを受け入れたら周囲への関わり方も変わってきたので、大きな変化を感じています。ジャーナリングで“点”を作り、コーチングで点と点を繋いで「線」を作る―― コーチングとジャーナリング、どのように棲み分けをしていますか?コーチングでは、1ヶ月分のジャーナリングをぱらぱらと読み返して、ちょっと引きずっていることや未解決な事象を掘り出してテーマに設定しています。「こういうことを言われて本当に傷ついた」といった感情のときもあるし、「この現象に何かヒントがありそうな”予感”がするので、テーマにします」というのもありますね。どんなテーマでも、自分のライフミッションや役割の話につながっていくので、コーチングは月に1回、自分の柱をメンテナンスする機会になっています。自分を整えるために、生活に組み込まれている感覚ですね。そういう意味では、コーチングの存在は、とても重要だと思っています。ジャーナリングだけでは、すごく浅くなると思うんです。コーチングで自分の中に深く潜り、ジャーナリングでバラバラに存在している点と点との繋がりを見つけていく作業をしている気がします。継続ジャーナリングで自分の“在り方”を引き出す―― ジャーナリングを継続するコツはありますか?「習慣を変えれば人生が変わる」という言葉を大切にしています。私自身「習慣化できなければ、何も変わらない」と思っていて。「新しく始めるなら、習慣化できるまでやってみる」と自分に課しているんです。新しいことを始めるときは、「習慣にしよう」と強めの意思を持つようにしています。ジャーナリングの継続も、自分のなかで習慣化したと思えるレベルまでやろうと決めて始めました。習慣化しようと決めたことは、記録をとって1年365日のうち7割くらい実行出来たら、“習慣化認定”をしようと決めているんです(笑)。7割の継続を達成出来たら、必ず習慣化できるので、255日を目指しました。もちろん、早起きなど、ずっと自分に課していても、ずっと出来ていないこともありますが(笑)。―― これから始める方へのコメントをお願いします!前提として「ジャーナリングで新しい気づきを得よう」と期待をしない方がいいかと思います。気負わずに始めてみて欲しいです。自分は今すぐ変わらないのに、ジャーナリングを始めただけで新しい気づきをすぐ得られるなら、人生はもう変わっているはずですよね。「どう生きていきたいか」「どんな自分でありたいか」など、時間軸が長い問いに対して、気づきがある日もあれば、全くない日もある。ジャーナリングで“ありのままの自分”を書いていく。私の場合、ありのままの自分を表現し続けたことで、ライフミッションや自分のコアに近づく”予感”を見つけられたと思っています。すぐに思っていたような気づきが得られなくても、「ジャーナリングを継続する」ことを目標に気軽にスタートしてみてはいかがでしょうか。私のように、“見えていなかった自分”に出会えるかもしれません。[文]平谷愛 [編集]大久保亮佑一人での内省・ジャーナリングの習慣化が難しい方はこちらZaPASSでは、毎週エグゼクティブコーチの問いをもとにジャーナリングするサービス「ZaPASSジャーナリング」を提供しています。参加メンバーの気づきのシェアの時間もありますのでご興味ある方は是非お申し込みください。https://zapass.co/journaling■関連記事【コーチ監修】ジャーナリングとは?効果やメリットとともに初心者でもできる手順を解説【コーチ監修】ジャーナリングのテーマは何が良い?決め方やおすすめテーマ25選を紹介