-
コーチインタビュー
現実を変える力強さと、人生を丸ごと受けとめる柔らかさと~剛柔一体で挑む、心から湧き出る願いの実現に向けたコーチング #本橋 竜太
SITEMAP
- ZaPASSについて
- ZaPASSコーチングサービス
- ZaPASS MAGAZINE
- お問い合わせ
ZaPASSで活躍するコーチに、コーチになったきっかけやコーチングへの想いを聞く連載。今回は、松浦瞳さんのインタビューです。
松浦 瞳|プロフェッショナルコーチ
上智大学を卒業後、外資メーカーを経て、株式会社博報堂コンサルティングにてブランドコンサルタントとしてマーケティング・ブランド戦略の立案やブランドマネジメントなどのプロジェクトをリード。その後、国内大手メーカーの経営戦略部にて、コーポレートブランドのビジョンメイキング、ブランド組織の再設計などの業務に従事。2017年1月より、コンサルタントとして独立。株式会社igniteを立ち上げ、企業の成長戦略、ブランド戦略のサポートを行うとともに、個人のパフォーマンスの最大化をサポートするべく、コーチングを提供している。
――松浦さんがコーチになった理由を教えてください。
私が自分を見失っているとき、進むべき道を示してくれたものがコーチングだったからです。
私は幼少期をアメリカで過ごしました。アメリカ人からは「日本人」という異質な存在として見られるし、英語が話せないから同級生ともうまく馴染めない。どうすればいいのか悩んでいたとき相談していたのが、通っていた小学校のスクールカウンセラーさんでした。
他人から悩みを相談されたときって、「こうしたらいいんじゃない?」とアドバイスをしがちですよね。でも、そのスクールカウンセラーさんからのアドバイスって一切なくて。代わりに「あなたはどうしたいの?」と、私の思いを掘り下げる問いを投げかけてくれました。
苦しいことが多い日々の中でも「自分がどう生きていきたいのか」を見つめ直して、前に進むことができたのは、このスクールカウンセラーさんのおかげです。
この経験をきっかけに、カウンセリングや心理学に興味を持ち、大学もその方向に進もうと考えていました。カウンセリングや心理学がどのようなものか調べている中で、コーチングのことも知りました。
でもそのときは、結局その道は諦めたんです。人の心を扱うには、私は共感力が高すぎると思って。そこで大学では、行動心理学やマーケティング領域を学び、卒業後はマーケティングやブランディングを軸に仕事をしていました。
その後、コンサルタントとして働く中で、だんだんもどかしさを感じるようになって。クライアントの経営陣と私たちコンサルタントで素晴らしい成長戦略を描けたとしても、戦略の実行フェーズに移ると、うまく進まない……。
成長戦略を実際に動かすのは、現場のメンバーの方々です。現場のメンバーの方々がこのプロジェクトの意義を腹落ちできていない状態だと「今までこうやってきたのに、なんで変えるの?」と反発されて、なかなかうまく進まない。
結局、人の「心」が入らなければ、成長戦略は机上の空論にすぎない。プロジェクトメンバー1人1人の想いや意思に耳を傾け、引き出していく必要があると感じました。
そのためには、どうすればいいのかわからず悩んでいたとき、小学校時代のスクールカウンセラーさんとの対話や、進路選択のときにカウンセリング・心理学に興味を持っていたことを思い出しました。
「ビジネス経験を経た今だからこそ、コーチングという関り方をコンサルタントとして取り入れることで、クライアントさんに新たな価値を提供することができるかもしれない」、そう思って、コーチングスクールの門を叩きました。
もともと私のコンサルティングは、クライアントさんに一方的にアドバイスをするスタイルではなく、問いを投げかけながら、クライアントさんが本当に実現したい思いを、一緒に考えるスタイルでした。
実際にコーチングを学び始めると、「今まで私がやってきたコンサルティングはコーチング的だったのか」と感じて。私のやりたいことはここにあるんだなと確信を持ちました。
――松浦さんが考える、コーチングの価値って何でしょうか?
自分の様々な側面が統合されて、自分らしい状態に戻ることです。
働いている人の多くは、ガチガチの鎧を着て、武器もたくさん持って、厳しいビジネス社会で戦っています。コーチングを学ぶ以前の私もそうでした。
コンサルタントであるからには、クライアントさんより多くのことを知っていなければ。男性にも負けない、論理的にスキのない説明をしなければ……。勝ち負けにこだわった仕事をしていました。周りからも、イヤな人だと思われていたかもしれません。
でも、私はコンサルタントだけど、知らないこと、わからないこともたくさんあります。コンサルタントだから、「ロジカルで隙を見せてはいけない」と武装していたけれど、私の強みは右脳的な直感力にあるかもしれないともうっすらと感じていて、それをもっと自由に解き放ちたいとも思っていました。
人は本来、得意な部分や苦手な部分もある、デコボコな生き物です。完璧な人なんていません。でも、「ビジネス社会で戦うには、完璧な存在でなければ……」と思っている人は多いのではないでしょうか。
コーチングを学んでから、私は自分が弱みだと感じている部分を認められるようになり、クライアントさんと接するときにも、自分らしさを出せるようにしました。そうすると、クライアントさんも以前より、弱みや悩みを出してくださるようになったんです。
コンサルタントが「上から目線」で指示をするのではなく、クライアントさんと一緒に歩いていく。そんなフラットな関係を築けるようになったと感じています。本質的な課題に向き合うから、コンサルティングの成功度や達成度も、ぐんと上がっていきました。
ありのままの自分、デコボコがある自分を素直に認め、統合できる。そうすることで、相手とフラットな関係を築き、自分らしさを出しながら関われるようになる。これがコーチングの価値だと思います。
――弱みをありのままの自分らしさとして認めて、人にも見せることは、特にビジネスの場面ではなかなか難しいように思います。なぜそれが必要なんでしょうか?
強みも弱みも含めて自分らしさを出せるようになることで、自分が持っているもの全てをリソースとして使えるようになるからです。
例えば、直感的に動きがちで、論理的思考力が弱い自分が嫌いな人もいるかもしれない。でも、だからといって左脳をフルに使って理論武装をしているのは、無理して左手だけ使っている状態といえます。右脳が得意なイメージや感情も使うことができれば、両手が使えて、どちらも活かすことができる。自分では受け入れたくない弱みや嫌いな部分も、実は大事なリソースの一つなんです。
弱みは人に見せたくないものだと思います。家族やよほど近しい関係性の友人ならまだしも、上司や取引先の方にさらけ出すなんてもってのほかですよね。でも、上司に見せる自分も、友人に見せる自分も、あなたであることは変わりません。
さらに、「自分はここが弱みだ」と思っていても、他人から見ればそこが強みだったりすることって、本当によくあります。弱みと思って蓋をしてしまっていては、せっかくのリソースが活かされなくなってしまうと感じます。
本当はリソースとして使えるものを、そうできないのはもったいない。全てを生かしてこそ、その人の可能性を最大化できると思うんです。
自分の弱い部分も認めて受け入れていくことで得られるのは、自分というリソースの活用だけではありません。
ありのままで在れるようになればなるほど、自然と人を頼ったり、人の弱い部分も受け入れられるようになります。つまり、自分の周りも生かせるようになる。
私自身も、コーチングを学ぶ前は人に助けを求められず、一人で抱え込みがちでした。今では、以前よりずっと素直に助けを求めることができています。私が苦手なことは、得意な人に任せたらいいよねって。
ただ、やっぱり弱みを受け入れて自分らしい状態に戻るのって、簡単ではないです。弱みって柔らかいボールみたいなもので、つつくとすぐふにゃっとなって、痛みを感じやすい。過去になにかしらの痛みを感じたからこそ隠しているわけで、一人だとその痛みから逃げてしまうかもしれません。
そこにコーチがいれば「1人じゃないから、一緒にその柔らかい部分をぐっと覗いてみよう」と、1人では避けてしまう内面の深い部分に潜れる。コーチとしては内面に潜るクライアントに寄り添って、その人が「自分らしい自分に〇をしていく」過程に伴走していく感覚です。
――松浦さんは、今後どのようなコーチになりたいですか?
弱みもさらけだしていいと思える、例えるなら「おばあちゃんみたいなコーチ」になりたいですね。
頑張って成長したいと思っている人ほど強がりで、ガチガチな鎧を着ていることが多いと感じます。コーチングを学ぶ前の私が、まさにそうでしたから。
自分の弱みを隠して頑張っている人に対して、コーチングを使って、その鎧を脱ぐお手伝いをしていきたいですね。自分らしく仕事ができれば、仕事がより楽しくなって、その人のパフォーマンスもぐんと上がります。そして、仕事や人生が楽しい!と感じる人が増える、そんな世の中を作っていきたいです。
また、これからは組織に対するコーチングをもっと深めていきたいと考えています。
今は個人に対してコーチングをご提供していますが、クライアントさんは1人で生きているわけではありません。家族だったり、組織だったり、人との関係性の中で生きています。
例えば、クライアントさんが鎧を脱ぎたくても、周りが完全武装状態だったら、鎧を脱ぐことは難しいですよね。クライアントさんがその人らしく生きるためには、クライアントさんの周りの環境も大きく作用すると思っています。
私自身も、子どもが生まれて母になり、同時に夫も父となり、今まで夫と妻だった関係性が、子どもから見れば父と母に変わっています。このように、人は周りとの関係性の中で役割が変わっていくのです。
具体的には、組織コーチングや組織心理学を学び、実践へとつなげている最中です。クライアントさんの周りにある環境、チームや親子関係などにもアプローチできるコーチになり、その人がその人らしく生きることができる場所をもっと増やしていきたいと思っています。
[取材]大門史果 [文]米澤智子 [編集]青木まりな [撮影] 伊藤圭