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コーチインタビュー
デザイナーが、プロのコーチにもなった理由。誰も知らない「私自身」に気付き、生き方を本質的にアップデートする対話を #みなみゆみこ
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ZaPASSで活躍するコーチに、コーチになったきっかけやコーチングへの想いを聞く連載。今回は、有田直子さんのインタビューです。
有田直子|コーチ
1992年、大阪府吹田市生まれ。大学時代は留学、旅、NPO/NGOでの活動などを通じて『人生は自分次第で劇的に変化する』ことを確信。卒業後は、経営・ビジネスの基礎を学ぶべく、株式会社コスモスイニシアにて、経営者に向けた資産運用のコンサルティングを担当。
その後人事部へ異動、新卒・中途採用責任者として、年間150名以上のキャリア面談を実施。採用のみならず育成企画・研修運営・文化醸成等、人材開発領域に幅広く携わっている。複業で、パーソナルコーチング、中高生のキャリア支援、リーダーシッププログラムの開発・提供など、パラレルに活動中。
――コーチになった理由を教えてください。
私自身が「自分の人生の目的は何か?」と考える機会が多く、自分らしく生きる人を増やしたいと思ったからです。
「人生の目的」に向き合うきっかけは、小学校のときに習っていたバスケットボールのコーチとの出会いです。あるとき、コーチがチームのみんなに漢字を一文字プレゼントしてくれたんですけど、私は「芯」と書かれた色紙とともに、「ナオ(直子)は『芯』のある人生を歩んでいきなよ」と言葉をかけてもらったんです。
その色紙はずっと部屋に飾っていて、ふとしたときに「私にとっての『芯』って何だろう」と漠然と考えるくせがついていました。
私は、自分の「芯」を持って、それに沿った人生を歩みたいと考えるようになったんです。
同時に、そんな“自分の人生”や“自分らしさ”と向き合うきっかけをくれたバスケットボールのコーチに憧れるようになり、教員を目指していたんです。そして、大学生になった私は世界と日本の教育を学ぶNPOやNGOに参加しました。
実際にケニア・アメリカ・インド等様々な国の教育に触れて気付いたのは、国によって幸せの形や人々の価値観が全く違うこと。日本での“当たり前”が通じない世界を見たことで、「人生って、自分次第でどんなふうにも生きれるんだな」って思ったんです。
自分の人生の「芯」を持っていれば、どんな場所や環境でも自分らしい人生をきっと開拓できる。そんな人を増やしたい。
ただ同時に、教員になること=一人ひとりが「芯」を持てるように支援ができるのかと考えると、必ずしもそれだけじゃないようにも感じていて…。
それならすぐに教員になるのではなく、まずは民間企業で自分の力を付けようと考え、コスモスイニシアに入社をしました。
コーチとしてもやっていこうと決めたのは、コスモスイニシアの新卒採用の経験と友人の一言です。
日々学生さんと面談するなかで、就職活動のための自己分析だけでなく、もっと日常的に自身の人生と向き合い、「自分は人生で何をしたいのか」「自分らしさとは何か」などを考える機会や相手が必要ではないか、と感じて。
「就活の学生面談という枠を超えて、一人ひとりの人生に向き合う仕事がしたい」。
そんなことを悶々と考えていた私に、友人の一声があり、コーチングに興味をもちました。「コーチングのスキルを学べば、ナオ(直子)が実現したい世界に近づくんじゃない?」と教えてくれたんです。
こうしてコーチングを学び、プロとしてやっていくことを決めました。
今は、コスモスイニシアでの仕事のほかに、中高生のキャリアサポートや、社会人に向けたパーソナルコーチングなどを行っています。
――有田さんが考える、コーチングの価値って何でしょうか?
「人生を自分で決める感覚」を持てるようになることでしょうか。
私は、自分の人生は自分で決められるし、変えたいと思えば変えられると思っています。
ただ、そのためには自分と向き合って、自分の本心は何を感じているのか、本当はどこに向かいたいのか、などを考える機会が必要です。
例えば、あるクライアントさんは、最初のセッションで「私は自分が大嫌い、自分に価値はない」という痛みを抱えていて。
でも、セッションでありのままの自分と向き合い、自分で考えるだけでは得られない気づきを得るなかで、痛みの奥にある自分らしさや願いに近づいていって。
今では「私はこういうことがしたい。そのために次のセッションまでにこんなチャレンジをします!」と話してくれるようになりました。紡ぎ出す言葉も表情もエネルギッシュで、初回とは別人のようです。
自分の感情や願いと向き合うことは、忙しいと後回しにしてしまいがち。でも、そういった自分の奥底にあるものにアクセスし、コーチとともに言葉に紡ぎ出せば、人生を変えるリソースに変えることができる。
こうやってクライアントさん自身が変化を実感して、人生が豊かになっていくのを目の当たりにすると、コーチとしてとても感激しますね。
――有田さんがセッションの中で大切にしていることは何ですか?
クライアントさんとバディ(相棒)のような関係を作ること、思考以外の身体感覚などを使ってもらうこと、あとは心からクライアントさんを信じること…でしょうか。
コーチとクライアントは上下関係ではなく、今この瞬間を一緒に歩む“バディ(相棒)”です。家族でも友達でもない、でもどんなことでも話せる特別な存在だと思います。
クライアントさんと一緒に歩み、時には一緒に止まりながら、その人の大切なものや人生がもっと豊かになるにはどうすればいいかを考える。「一緒に」というところがむちゃくちゃ大事です。
そしてセッションでは、頭だけでなく、身体感覚やイメージを使うことも大切だなと感じています。ほとんどの人は、普段は頭ばかり使ってますよね。でも、五感すべてを使うことで、新たな思考が開けるんじゃないかなって。
例えば、モヤモヤしているけれどもなかなか言語化できないクライアントさんに「洗濯機の中でぐるぐる回されているみたいですね」とイメージを共有してみて、クライアントさんと一緒に身体を動かして体感してみたり、何を感じたか深堀りをしてみたり…。
そうしたらクライアントさんから、「私は回されるんじゃなくて、自分で動かしたいんだ」という言葉が出てきたんです。
こういった会話は日常では絶対やらないことですが、このクライアントさんの感じているモヤモヤを言語化することにつながったと思います。
あとクライアントさんを信じるという点だと、私はわりとクライアントさんにズバズバ言うほうなんです。「本当にそう思ってる!?」とか「本当にそれが大事なの!?」とか。結構大胆に(笑)。
これは、「答えはクライアントさんの中に絶対にある」と信じているからこそできること。私はクライアントさんのことを誰よりも信じているから、率直に話すし、時には耳が痛いようなことも伝える。
バディのような関係性があるという前提ですが、そういった取り繕うことがない本音での対話こそがクライアントさんの心に届いたり、本質的な変化につながっていくのかなと思います。
――有田さんは、コーチとしてどんな未来をつくっていきたいですか?
自分の人生の舵を、自分で取る人を増やすことです。
人生の意思決定を、他人の軸とか世の中の当たり前とかではなく、自分で考えて決めることで、人生は豊かになる。そのために、クライアントさん以上にその人の可能性を信じて、自分らしさに溢れる道を歩めるように後押ししていけたらいいなと思います。
ただ、それを実現するために一番大事だと思っているのは、私自身がそういう生き方をすることです。
クライアントさんが自分の人生の舵を取るべく挑戦しているのに、コーチである私が「頑張れ!」と横からいうだけではだめ。私自身が人生の舵を自分で取っているからこそ、クライアントさんとバディの関係になれるんです。
コーチングって、なくても生ていけるもの。でも、自分の人生の目的や成し遂げたいことをコーチングを通して言葉にすることで、自分の意識の中にアンカー(錨)が生まれて、目印ができる。そうすると、自然とそれに向かう行動をするようになっていけます。
さらに、コーチングのセッションを通して自分自身と向き合い、自分のポジティブな面も、ネガティブな面も受け入れることで、自分のリソースとして使えるものが大きく広がる。その結果、人生をより豊かに、厚みのあるものにできるのではないでしょうか。
コーチングはいわば「人生の加速装置」です。コーチングを通して、人生の舵を自分で取り、ぐっと加速して進めていく人をもっと増やしていきたいですね。
[取材]大門史果 [文]米澤智子 [編集]青木まりな [撮影] 伊藤圭