こんなにもマネジメントが難しい理由は、自分の中にあった。感情を扱い内発的動機を引き出す、これからのマネジメント #黒田俊介

こんなにもマネジメントが難しい理由は、自分の中にあった。感情を扱い内発的動機を引き出す、これからのマネジメント #黒田俊介

いちプレイヤーだったときは、自分でどんどん突き進んでいけた。でもリーダーやマネージャーになった途端に、モチベーションが低下するメンバーに対して、どう立ち回ればいいのかわからなくなってしまった。

どうすればメンバーはやる気を出してくれるのか、成果を上げるために必要な行動をとってくれるのか、どうすれば、どうすれば…。

マネジメントが難しいのは、きっといつの時代も変わりません。ですが、企業を取り巻く経営環境は複雑化し、変化のスピードが加速している今、マネジメントのやり方も転換期を迎えています。今までのやり方が通用しにくくなり、「何か」を変えなければならない。そう感じている方も多いのではないでしょうか。

経営コンサルタントであり、プロコーチとしても活動し、ZaPASSではコーチング型マネジメント講座の講師を務めてくださっている黒田俊介さんは、「感情を扱うこと」が大事だと言います。

私たちはそろそろ、鍛え上げてきた論理的思考力を少し横に置き、喜びや苦しみといった、人間らしい部分に向き合う必要があるようです。

企業の業務/組織変革に長年向き合ってきた黒田さんに、これから求められる「感情を扱うマネジメント」について伺いました。

黒田 俊介|NLP(神経言語プログラミング)プラクティショナー、ホラクラシー・プラクティショナー、経営学修士号(アシュウッセ・パリ/中欧国際商工学院)。
97年より現在まで一貫して、業務変革・会社統合の支援に携わる。ファーストキャリアである経営コンサルティングファームで企業を支援する中で、本当に変革をもたらすには組織と人の気持ちを理解しないと始まらないことを痛感。米国CTI認定 プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)・米国CRR認定 組織と関係性のためのシステムコーチ(ORSCC)を取得し、現場に適用してきた。その中で出会い、実践してきたレゾナントリーダーシップ®という他者との関わり方は、全てのマネージャー・働く人に必要であると考え、伝えている。

人はロジックでは動かない。変革のエネルギーは感情から生まれる

黒田さんの現在の活動について教えてください。

コンサルティングとコーチングの両輪で、企業の変革を支援しています。

コンサルティングでいうと、大学卒業後から約20年にわたり、M&A後の会社統合の支援や、業務変革、ビジネスプロセスアウトソーシングなどの現場のオペレーション改善などに携わっており、現在に至るまで続けています。

コーチングにおいては、企業向けにコーチングを取り入れたマネジメントの導入を支援したり、ZaPASSではマネジメント層向けのコーチング講座の講師もさせていただいています。中でも私が特に力をいれているのが、「レゾナント(共鳴型)リーダーシップ®」を伝え、広めることです。

レゾナントリーダーシップ®は、『U理論』という書籍を翻訳した由佐美加子さんがNVC(Nonviolent Communication)の考え方を取り入れて 独自に開発した人材育成プログラムであり、「感情を扱うテクノロジー」といえます。特に、怒りとか悲しみといった感情をどう扱うかということに焦点を当てています。

―コンサルタントだった黒田さんが、コーチングやレゾナントリーダーシップ®に興味を持ったのはどういうきっかけだったのでしょうか?

コンサルタントになりたての私は、左脳で考えたロジックを使ってクライアントの働き方を変えようと躍起になっていました。しかし、ロジカルな説明を理解してくれても、現場で働く人たちはなかなか変わってくれない。

「お客さんが言った通りにやってくれません」と私が言ってしまうことは簡単ですが、これでは企業を変革できません。彼らの行動を阻んでいるものは何か。そう考えると、「言っていることはわかるけどさ……」といった、「感情の溝」だったのです。

左脳、つまりロジックを扱うことについては、学校でも会社でもトレーニングさせられています。論理的思考能力が高い人のほうが評価されるので、その能力を必死で高めようとしますしね。

一方で、右脳、感情をどう扱うかについて、考えたことはありますか?

特に日本の会社では、怒りとか悲しみといった、ネガティブな感情を会社に持ちこんではいけない、という風潮が強いのではないかと私は考えています。会社で泣くとか、なかなかできませんよね。

でも、そういった感情の裏には、「自分が心から望んでいるもの」が隠れているんです。それは自分だけでなく、他人も同じ。ネガティブな感情に焦点を当て、相手が本質的に求めていることを共に理解する。そうすることで、相手は自身のモチベーションに気づくし、自分は相手を深く理解できるようになって、関係性がより良いものに変化するのです。

これまでのビジネスではロジックが重視されていて、感情は脇に追いやられていました。しかし、感情はエネルギーの源泉。マイナスなものも含めて感情を扱えれば、リソースに変えていける。レゾナントリーダーシップ®を広めることで、会社が心身ともに疲弊する場所ではなく、逆にエンパワーメントされる場所に変えていきたい、その流れを加速していきたいと思っています。

加速する変化のスピードに対応するには、メンバーが自ら判断し、動くことが必要

―なぜビジネスの場面で感情を扱うことが求められているのでしょうか?

ビジネス環境の変化が大きいですね。

今は世界の多様性と変化のスピードが上がっていて、現場にいる一人ひとりが主体的に判断をしていかないと、その変化するスピードに間に合いません

昭和型のピラミッド組織では、指示する者と指示される者の役割が明確に分かれていました。人間の身体で例えれば、ピラミッドの頂点に君臨する脳だけが判断を担い、手足とか耳とか口とか、感覚器官に「こうしろ」と指示をだしていた。

しかし、令和の今は違います。明日がどうなるかなんて社長でもわからないし、いちいちトップの判断を仰いでいたら、変化についていけません。

ではどうすればいいかというと、判断を誰かに委ねるのではなく、一人ひとりが、自分で判断して行動することが求められています。つまり、今後、組織はよりフラット化していくと考えます。

でも、「自分で判断しろ」と上から押し付けても、メンバーは動きません。それにはメンバーの感情から湧き出てくる、内発的な動機づけが必要になります。この感情に焦点を当てるのが、レゾナントリーダーシップ®です。

―感情に焦点を当てることで、どのように変化するのでしょうか。

私のクライアントで劇的な変化があった人の例をお話ししますね。

40代前半で、営業チームのリーダーをされていた方ですが、その方はやらされ感や責任逃れな面が多く見えました。新しいことやチャレンジングなことは避けたい、と。そこで私は、1on1やちょっとした会話を重ねる中で、彼の中に湧き上がる感情にフォーカスを当てていきました。

そこで出てきたのは、営業部と工場、その間に入って製品の受発注を受け持つ業務部、この3部署間の仲が悪いことがすごく嫌だという気持ちでした。連携が上手くいかず欠品がでたり、逆に生産しすぎて在庫の山ができていたりすることに、悲しさを感じていたんです。

この状況を変えたい」という気持ちに、彼のエネルギーの源泉があると感じた私は、「私たちと一緒に、R&Dや工場を巻き込んだ全社プロジェクトとしてやりましょうよ」と提案しました。そうしたら、もう水を得た魚のように、その部署の間を足繁く回ってね。結果として連携が進み、欠品や在庫が減って生産性向上に大きく貢献したのです。

ネガティブな感情は特に、その人が本当にやりたいことから湧き出ているのです。従業員がやりたいことと、会社のメリットが一致した瞬間に、爆発的に成果がでることはこのケースのほかにもよくあります。

メンバーと上手くいかない原因は、自分の決めつけ=ビリーフが作っている

―では、マネージャーがレゾナントリーダーシップ®を身につけ、感情を扱えるようになるために必要なことは何でしょうか?

自分の思い込みである「ビリーフ」の存在を知り、客観的に見つめ、扱えるようになることです。

人が世界を捉えるとき、その人が生きる中で無意識に構築した「ビリーフ」を通して見ています。私自身も、かつては「高い地位にいる人間は、立場が弱いものを力で従わせようとする」というビリーフを持っていました。

これは私の幼少期の経験からできたものです。弱者である子どもを力で従わせようとする大人がいて、当時私はとても苦しい思いをしました。

もちろん、そんな経験を日々思い出していたわけではありません。ですが、社会人になってからも、私は「高い地位にいて、主張が強いタイプ」の人と毎回ぶつかってしまい、上手くコミュニケーションが取れなかった。上司やクライアントがそういう人の場合もありますから、これでは仕事が進みません。

高いポジションにいるとしても、全員が権力を振りかざすような人ではありませんよね。でも、私は「こういう人は権力を振りかざすはずだ」と決めつけて、相手のそういう面を自分から探していた。上手くコミュニケーションをとれない状況は、相手に非があったのではなく、私自身が作り出していたのです。

人それぞれ持っているビリーフは異なりますが、無意識的にであっても「人は監視していなければサボる」なんて信じ込んでいたら、部下の悪い面ばかり探してしまいますし、関係性は悪化するだけです。

対して、ビリーフの存在に気づき、それを客観的に取り扱えるようになれば、自分の中のフィルターを外して相手のありのままを見ることができる。これがレゾナントリーダーシップ®の基礎になります。ビリーフを知り、客観視する。それを繰り返すことで、自然とマネジメントも変わっていくと思います。

かけるメガネを変えることで、自分が変わり、他者との関係性も好転する

―少し気になったのですが…コンサルティングにコーチング的なコミュニケーションを取り入れるだけでも黒田さんのお仕事としては十分だったようにも見えます。コンサルティングと平行して、コーチングやレゾナントリーダーシップ®を広げる活動もされているのはなぜでしょうか?

ビリーフの存在に気づき、必要に応じてそれを付け替えることができる人が増えれば、世界はもっと平和になると思うからです。ビリーフはメガネと同じで、捨てることも付け替えることもできる。つまり、自分が見られる世界観は1つではなくて、別のものもあるんです。

今かけているビリーフ=メガネが自分を幸せにしていないものであれば、外してしまえばいい。私自身も、自分が持っているビリーフに気づいて客観視できたことで、他者との関係性が変わり、楽に生きられるようになりました。だから、コーチング関連の仕事も続けているんでしょうね。

他者との関係構築は、ダンスのようなものです。相手を操作して変えることはできません。まず自分のビリーフに気づき、相手に対する関わり方を自分から変えていく。そうすることで、相手の反応が変わり、関係性が好転していくのです。

マネジメントにおいても、メンバーの感情を自分のメガネを通さずに受け止められるように自分が変わることで、メンバーが心の底から欲しているものを探れるようになる。

自分の思い込み=ビリーフを客観視し、世界との関わり方を変えていくことはマネジメントにももちろん大事ですが、それ以上に「人生」にとって大事なんです。仕事も含めてもっと幸せに、平和に生きるために、自分のビリーフや感情を扱えるようになってほしい。私の願いであり、使命なんだと思います。

※コーチング型マネジメント講座の詳細はこちら
https://zapass.co/management-academy/

[取材]大門史果 [文]米澤智子 [編集]青木まりな [撮影] 伊藤圭

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